ウエスタン・ブロッティング(WB)の結果をどう処理したら公正なのかで議論がある。
片瀬久美子氏がそのブログで、WBの撮影結果を画像調節して、「あるのがわかっているバンド(スポット)を見えなくするのはよろしくない」と主張し、その例を挙げてアンケートを取った。
これに対し、他の方が、バンドを見えなくするのに、画像加工ではなく露光時間を短くするのとの差がわからないとのコメントがあったらしい。 他の方から(片瀬氏曰くで確認していない)「「気の遠くなるくらいの長時間露光をして、かすかに出て来るバンドまで無限に残らず論文に掲載せよ」と片瀬久美子氏が主張している」というコメントがあったりして、片瀬久美子氏は「誇張や極論化による「藁人形」作りはおやめ下さい。」と発言している。
おなじみ一研究者・教育者さんは「片瀬氏の「存在するのがわかっているのに短時間の露光でバンドを消したらアウト」という考えには、私は同意できない。」とし、露光時間を議論しているのに、片瀬氏はが画像処理を調節する議論を勝手に展開するのは「「わら人形」論法である。」と批判している。
皆さん藁人形がお好きなようで。
WBの写真は、生データで、生データが信頼できるようだということを示すのが肝要で、そのために、短時間の露光や必要以上の露光を行っているのではないということを示せばいいのではないでしょうかね。つまり明るさやコントラストを調節せずに提示できるようにデータを取れということです。むずかしいでしょうけど。管理人自身はWBなんてやってないからわからないけどね。現実にあいつのWBはきちゃない、あの人は上手だということがあるようだから、トレーニングは必要だ。
管理人の研究していた分野では例えば、こういう写真を論文の冒頭にもってくるのがパターンとなっている。つまり、しっかりデータを記録しこれを解析しているんですよということを示すわけだ。
単一ニューロンの活動を記録しつつ、何かを刺激したらこのニューロンの活動が変化したよという写真である。一本一本の縦線に見えるのが活動電位(スパイク)なのだ。発火頻度が低いので、この写真は数回刺激した結果を重ね焼きしている。今時はこういう図はAD変換器を介してデジタルで保存するから、この写真のようなオシロスコープでの重ね撮りの写真なんか珍しいだろう。しかし、このような写真が撮れることがデータの信頼性を示すことなのだ。 刺激というマークのところで活動電位の数が少ないのが分かるでしょ。でも不規則に活動するニューロンの数回程度の重ね撮りだったら偶然かも。偶然の結果を写真に示していると疑われちゃうかも。
だから、刺激がこのニューロンの活動を抑制することを示すために、この活動電位が生じたことを1として50 ms毎にカウントして作成したのが下図のヒストグラムだ。数十回以上の試行をカウントしている。つまり生の写真だけで証明するのではなく、別の手段でも証明しているのだ。
WBも、それだけではなく、他の方法での提示もできることによって、その他のバンド(スポット)がある無しなどに関係なく、事を証明するのという方法が採用されるようになるのでは?具体的にどうしたらいいのか知らないけどね。
WBの写真だけの論文なんて信用できないという時代にそのうちなるさ。そうなったら、WBの写真の加工は意味がないから、それなりの露光時間で撮影し、ゴミが少しあっても問題にならないということになるんでしょうね。それなりの写真にするには、それなりの訓練が必要になるのは当然ですが、そこそこの写真で問題ないという時代にそのうちなるのではないでしょうか。
All or None でないとレフリーに通らないという現状がまずいんですよね。こうなったのも、コントラストを調節して「きれいな」ゲル写真にした方がいて、前例になって、これを真似るのが慣例になりつつあるからですね。レフリーもこのコントラストのきつい写真が当然だと思うことになっちゃったんですかね。レフリーを通らないから、きれいなコントラストのあるWB図ではないといけない(こんなとこでクレームがついてrejectされたらたまらない)というわけで、画像編集が当たり前になっているのではないでしょうか。
地道にやって、その研究者や研究室では生のデータがきちんと取れているという評価を得ることが必要ですね。