実験は、だからやってみないとわからない。

浸透圧観察装置を使って実習を行った。1M、0.5M 蔗糖液そして水 の3つの液体を卵殻膜で仕切って水に浸けたわけだ。
蔗糖液は無職透明だ。提供する溶液の容器にラベルを付けて学生に供与するのが本来だが、彼等は間違える。そこで0.5 M蔗糖液は緑、1 M 蔗糖液には赤になるように色素を加えておいた。結果は;

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である。左の写真のようになるのが予想で、ほとんどの実習班ではそうだったが、1つの班では右写真のようになってしまった。つまり、0.5 M の液体のほうが液面の移動量が大きい。決して初期値(最初の液面の高さ)が異なったからではない。漏れがないことは学生は確認している。さて、どうしてだろ?これを議論するのが考察だ。結果が教科書通りにいかなかった班はラッキーだ。考えることが一杯あるからな。色がついているので液体を取り違えたという言い訳はできないのだ。
だから、やってみないとわからないのだ。
原因は、次のクラスでも同様な事象がみられたので、注意深く観察したらわかった。

左が予想通りだった例、右が 1M 溶液の液面の高さがほとんど移動しなかった例

糸で卵殻膜をガラス管に縛って取り付けると、かならず卵殻膜にはしわー折り目ができる。その折り目=卵殻膜が重なった部分が赤あるいは緑の色が濃くなっている場合がある。これは縛り方が緩く、あるいはきちんと縛っていないので糸の上のほうから液体がもれ、その液体が毛管現象で折り目に集まっているからだ。つまり折り目が色濃くなっていることは液体が上の方から少しずつ漏れていることになる。卵殻膜が破れているときは液体がぽたぽた垂れるのですぐわかるが、隙間から少し漏れるのはよくわからない。液体に色を付ける意義がまた別にあったことになる。
液体の移動量は圧と膜の抵抗に依存する。オームの法則だ。移動量を浸透圧の関数にするためには膜抵抗を一定にする必要がある。膜抵抗は卵殻膜の取り付け方に依存する。たっぷり余らせて取り付けると水との接触面積が大きく、すなわち抵抗が少なくなる。ガラス管の径にあわせてぴったり取り付けると抵抗は高くなる。この実験では膜抵抗を一定にしたわけではないので、移動量は濃度から一義的に決まらない。しかし 1 M と 0.5 M  では濃度が大きく異なり、卵殻膜のたるませ方は調整できないが大きな差がないとおもわれるから、移動量は濃度が高いほうが大きくなるだろう。時間が十分、例えば丸2日とかだったら移動量は関係なくなってくる。液面はある高さに限りなく近づくだろう。
[ 追記 ]
4つのクラスで実施したが、何故か赤い液(1M)の液面がそれほど上昇しない班が頻発した。硬いガラス管に糸を巻き付けて縛るのがうまくいかないようだ。しっかり縛ったように見えるが実は緩い。実験が終わって卵殻膜と縛った糸を取り除くとき、卵殻膜を引っ張ると糸ごとつるりと取れてしまう。管理者が予備実習で行った時はなかなか取れないのでナイフで糸を切る必要があった。どうやら学生はしっかり縛ることができないようだ。硬いガラス管に縛るのでしっかり外科結びをしろと、実習書に書いてあるのに….口頭でも説明したのに….
昨年度はプラスチックのシュリンジだったので弾力がガラスに比べあるので、しっかり縛る事ができたのかもしれない。やってみないとわからないもんだな。

体調不良

先週は勤務時間6時−20時が続いた。昼食の休み時間だけだから13時間働いたわけだ。これが5日だから、一般の会社でいうと残業25時間/週ということだな。ちときつい。じじいだからこたえる。前は帰宅するのが24時頃なんてのはざらだったから、それに比べたら楽なはずだか、この3年間はそんなに働いていないから、ちとしんどい。 金曜日の午後から、のどが、現在は咽頭部に炎症がある。両手の肘関節に違和感がある。発熱しているときの症状だ。口腔内が36.8℃だからそれほどではない。 体調不良という言葉で説明できる状況だが、体調不良というのも便利な言葉でこれを言われるとその詳細を聞くのがはばかれるというのが最近だ。風邪引いて熱があるというふうに言ってくれないと対応できない。脳機能不良と言えばもっといのだけど。

浸透圧観察装置

細胞生物学のごく始めに出てくる項目の一つに浸透圧がある。中学の理科で現象を観察させるところもあるだろう。高校の生物では必須項目の一つだ。しかし、あっちの大学1年生にはこの概念がわかっていない。生理学では浸透圧が消化吸収や腎機能で必ず出てくるわけなので実習を行うことにしている。大学なんだから浸透圧の計測を実施したいところだが、そのような機材もない。氷点降下で測定するのは機材も少なくていいが、時間がかかって無理だし、氷点降下と浸透圧の関係を説明したくない。熱力学だからな。浸透圧測定器を購入しちゃう手もあるが、浸透現象を理解するにはほど遠い。理解してから、色々な濃度の液体の浸透圧を測定するのだったらいいが、機械を使うと単なる数字の大小で終わってしまう。実習キットもあるがこれだと非生物学的だ。1セット5万円で最低の12セットとすると60万円も必要だ。そんな経費はない。
やっぱり、生物の資料を使って観察させる方がいい。タマネギの細胞を顕微鏡で観察させて高張液、低張液に曝すのもあるけど、顕微鏡がない。組織学・病理学実習という科目がないから顕微鏡がないのだ。
というわけで、ウズラの卵の卵殻膜が半透性膜なのでこれを使う実習を過去3年間やってきた。最初の1年は実習機材の関係から前任者が行ってきた実習をそのままやったが悲惨だった。実習書の記載が不十分でなんだかわからないうちに時間切れになっちゃう。実習書には溶かす液体が蔗糖となっているが粉のスキムミルクを溶かしていた。なぜスキムミルク?1 ml のディスポのシュリンジに卵殻膜をとりつけて、水の入ったビーカーに割り箸2本を横に渡しその間にぶら下げるという代物だ。管から溶液が溢れ出したらおしまいという実習だ。
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こんな風だ。これはキッズサイエンスという小学生対象の実験紹介サイトの写真だ。大学の実習としては、なさけない。唯一、良い点は水が移動するということを視認できることだ。
2回目はディスポのシュリンジは2.5 ml に替え蔗糖を使った。装置も工夫して、といっても装置を作成することができないが、割り箸はあんまりなのでステンレス針金でシュリンジを吊るす装置を作った。しかし、学生は針金を都合のいいように曲げてしまい、いまいちだった。シュリンジには容量の目盛があるので、学生はこの目盛の値を読むことになってしまう。液面の高さの変化を読むべきなのだが。シュリンジの長さが足りないので、オーバーフローしたら実験おしまいというなさけないものだった。3回目は針金で吊るすのではない方法を考えたのだが、制作する機器がないのであきらめて2回目を踏襲した。
ディスポのシュリンジをカッターで切って使うのだが、そのままでは切り口が鋭いので卵殻膜に傷を付ける。これを防ぐために切り口を加熱して角を丸くするのだが、中年Hはそのアイデアを出したのは俺だと主張する。管理者にはそのような記憶がない。管理者自身が、誰に聞く訳でもなく実施することだからだ。中年Hがアイデアを出すとすると、実習に参加してからであるはずで、管理者には切りっぱなしで実習のために用意した記憶はない。最初っからかヒートガンで丸めていたはずだ。予備実習のとき中年Hがコメントしたかもしれないが、そのようなアイデアは中年Hが言わなくても管理者にはある。
本年度は、3年かかってフライス盤と旋盤を導入したので、もうちょっとましなものを作成した。
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構想は単純で簡単だが、これを15セット作成するのはしんどい。ようやく昨日15セットを完成させた。

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これが寸法図。物差しとアルミアングルの寸法だ。スタンドに取り付ける為のステンレス丸棒はφ8 mm でφ4 mm のネジ穴をあけてアングルにはねじ止めした。物差しにガラス管を取り付けるために、パイプ取り付け金具というのを仕入れてきた。φ13 mm のパイプを固定する金具だ。ガラス管は外径10 mm、内径7.5mmの並ガラスを90 mmに切断したものである。ガラス管の方が細いので間に厚みのある両面テープをはさんである。並ガラスだとトーチで切り口を炙って角をなくし、切り口で怪我をしないように簡単にできる。パイレックスのガラス管のほうが割れにくくいいのだが、トーチの加熱ではなかなか溶けない。今回は急いでいたので自分で切って加工する必要があったので並ガラスにした。15セット総額8万円というところだ。

上からガラス管内の液体を注入・除去するためにカテラン針を使う。この針の長さが70 mm だ。物差しから15 mm ほどガラス管を突出させて卵殻膜を縛る部分を作ると、ルアーの部分をふくめると、ガラス管内で針の先端が物差しの0 cm に届く長さを考慮するとガラス管の長さは90 mmになる。液体の出し入れを注射器で行うとするとカテラン針になるのだ.ポリエチレンチューブを注射針に刺したものを作れば長さに制限がなくなる。しかし、ポリエチレンチューブが10 cm にもなると曲がっていて片手での操作がやりにくい。だからストレートな細い管がいいというわけでカテラン針を採用した。カテラン針の先端は切って鈍にする。必ず学生は指に刺すからな。

何か溶けていると水面が上昇する、異なった濃度の液体で液面の上昇スピードが異なるくらいを見てくれればいいという安易な実習だ。1年生の最初の実習はこんなもんでいいだろ。折れ線グラフ・散布図を描かせることも目的だ。指数(対数)関数の回帰曲線を描く学生などでてこないだろうな。折れ線グラフでよしとする。30分の測定時間だけなので仮に指数関数で近似しても誤差はものすごく大きなことになるからだ。

これで、実習がうまくいくようだったら、パイレックスのガラス管を注文して交換することにする。

ガラス管の物差しへの固定が、ガラス管上部のパイプ固定金具だけだ。1点だけなので回転してしまう。とりあえず透明なテープてとめてあるが、これをどうすかが問題だ。ガラス管と物差しは密着させる必要があり、ガラス管下部を固定したとき物差しの目盛が見えなければいけない。今回はガラス管の長さが最適かどうか分からないので調節が可能な状態であるが来年度は何らかの方法でしっかり固定する必要がある。

加工しやすい、透明なので両面使えることからプラスチック物差しを使ったが、耐久性がない。ステンレス物差しに変更したほうがいい。2枚のステンレス物差しを、背面が向き合うように隙間をあけて固定する。この隙間にガラス管の径が半分くらい入るというのをつくったらいいのではないかとも思っている。

あるいはデイスポーザブルのメスピペット(10 ml)の両端を切断して、目盛のある所を使う。目盛は容量 ml だが等間隔に切ってあるので、長さ mm に換算する式を与えれば高さとして読める。固定する方法は別途考える。硬いバネでプラスチック管をはめ込むような形にすればいい。管を完全に覆うようなパイプフォルダは、液面が隠れちゃうからまずい。プラスチックの材質にもよるが接着剤で付けちゃう手もあるな。

ともかくこの装置を使う実験は、学生にとって、これまでやったことのない定量的実験の第一歩なんだけど、定量的に取り扱うのは無理だろうな。

雑誌記事のインタビューの依頼

日経BP社の日経NETWORKの編集者の方から「トラブルからの脱出」という連載記事に、DHCPが複数立った事件とその解決について記事にしたいからインタビューを受けてくれないかという依頼があった。
何年か前に、同じ事件があり、すでに記事になっていると教えたら、掲載されたのは2005年で、重複がないように調べたのが 2007年以降だったのでわからなかった、すんませんという返事だった。だからキャンセルだ。
20140421NikkeiNet
そうか、もう9年も前のことか。以来、何回も同じ案件が勃発して、もやは日常茶飯事なので、管理者が出て行くことはなくなり、他の職員が対応している。
しかし、このような分野は管理者のホントの仕事の分野じゃないんだよね。
で、ホントの分野でのインタビューを同じ日経BP社の「日経ヘルス」という雑誌から受けて、雑誌の連載記事になったんだけど、そしてこの雑誌の連載記事が単行本になったのだけど、謝礼などなく、単行本が送られてきただけだ。こっちの方が専門なんだけどね。
20140421sugoikarada

さって、風呂にも入ったし…

風呂、酒、飯 で今、第2ステップの酒だ。
日本テレビの事件記者とかいうニュース番組を見ている。笑点の続きだからだ。
日テレは、医学分野の識者43名にアンケートをとった。「STAP細胞はあるか?ないか?』というアンケートだ。数はわからないが、「ない」が最も多く、「ある」がそれに続き第3の意見もあるようだ。あくまでも、TVで見た限りだ。
日テレはアンケートの設定を誤った。医療系の識者とは誰だかわからないが(少なくとも管理者はカウントされてない)、サイエンスの分野に住む住人にはこのような質問をしたら、3様に分かれるのは自明だ。
大衆向けの番組だから「ある・なし」になるがこういう質問は科学者に対してあり得ない。天文学者100人に聞きました。UFOは存在する・しない? というレベルだからだ。
STAP細胞はある・あるとはいえない というような質問にしないといけない。
誰も「ない」とは言えないのだ。
ちなみに、今晩は、サーモンのオーブン焼きイタリア風、鯵のたたき、レバ刺し、納豆の油揚げ包みという、毎度の飲み屋メニューだ。

使途不明金

今年度も中年Hに非常勤講師を続けて引き受けてもらっている。
昼休み、中年Hは本来の専任教員となっている大学について「実習経費を立て替えているのになかなか支払ってくれない」とぼやいた。だから銀行口座に金が残ってないので支払いに困っているというのだ。
当然、銀行口座に金がないというのは、中年Hの給与、非常勤講師の給与から考えてあり得ないことであると議論になった。実はちゃんと別の口座もあって、そちらから銀行振込を行っている口座に金を移転するのが面倒で(手数料もかかるし)、口座に残金がなく、銀行からの自動振込ができなくなる可能性があるということだけだ。
また、例のごとく忙しいので金を使う暇があるわけがないと追求した。その結果、毎月、使途不明金が9万円あることになった。つまり、この9万円は、関係者がよってたかって使っていいい金だ。そのほうが、何に使ったか分からないことにならず、中年Hにとって無駄にならないことになる。ネットオークションで正確な時刻表示ができない腕時計を買うよりはるかに有意義だ。
関係者は使うことにしましょ。

USBメモリー

実習はADコンバータを使って、生理現象をパソコンで記録するのが主になる。またレポートはワープロや表計算ソフトを使って書くことになる。書くのは大学の学生共用のパソコンルームでだ。大学のパソコンの設定はサーバに個人フォルダが用意されているわけではなく、端末となるパソコンに保存されるから、同じパソコンを使わないと保存したデータを使えないことになる。同じパソコンがいつも空いているわけではない。したがってUSBフラッシュメモリーは学生にとって必須となる。
そこで、最初の実習で「USBメモリーを購入しなさい、8Gだって千円以下だからな。生理学実習だけでなく他の講義や実習でも使うから。」と伝えた。
今日、新聞の折り込み広告である家電量販店のチラシをみたら、もはやUSBメモリーは目玉商品にもなってない。もう普及しちゃって、単価が安いので家電量販店でも相手にしないんだな。
価格ドットコムでみたら8Gで250円てのがあった。送料のほうが高い。
2回目の実習でさっそく必要になったわけだが、持ってない学生が多数いた。なにを聞いているんだか。スマホでお父ちゃんに「USBメモリ必要だから買ってきて」と実習中に電話する学生がいたよ。スマホを使いこなすのは大学生だけど、行動は小学生並みだな。そのくらい自分で買いにいけよな。
来週の実習くらいから、実習室は幼稚園になるんだろうな。騒音計があるんだけど、実習室に設置するようになってないのでそのうち作成してみる。大型のディスプレイを付けるのだ。

この季節には…

旬の食べ物といっても、養殖、栽培、冷凍技術が発達して曖昧になっているこの頃ですが、毎年この時期に作っているものです。筍が出回っています。
20140413banboo=beef
論文の方法に書いたレシピ

筍は米ぬかとトウガラシで30分~1時間炊きます。ぶつ切りにして、日本酒、みりん、醤油、だしを加えて筍の半分くらいが浸るくらいの量で炊きます。塊で手に入れた牛肉は表面をトーチで炙ります。一口大に切り、盛り付け、炊いた筍を盛り付け、その煮汁を注ぎ、木の芽を添えます。

同じように作れないというクレームがあったので、後出しにしたレシピ

筍は先端を斜めに切り落とし、先端のみ切れ目を入れて米ぬかとトウガラシで30分~1時間炊きます。筍の大きさで変わります。根元に竹串が通ったら茹であがり。そのまま冷やし、手で扱えるようになったら、ぬかを水で洗い、固い皮や根元の固い部分を切り取ります。丁寧にするときは、再度軽く炊き、米ぬかを完全に取り除きます。やらなくてもいいですよ。ぶつ切りにして、日本酒(大匙1)、みりん(大匙1)、醤油(大匙1)、だしを加えて筍の半分くらいが浸るくらいの量で炊きます。煮汁に筍が浸るようにひっくり返します。筍に隠し包丁を入れるなどするとお年寄りにはいいですな。牛肉は塊で手に入れて、金串を打って表面をトーチで炙ります。一口大(ぶつ切りにした筍と同じくらいの大きさ)に切り、盛り付け、炊いた筍を盛り付けとその煮汁を注ぎ、木の芽を添えます。木の芽は片手のひらにのせ、ぱっちんと手を合わせて香りをだします。

このレシピで再現できるかしらん?筍のゆで方は業界で常識だから方法には書かない。「筍は先端を斜めに切り落とし、先端のみ切れ目を入れて」というのが読んでも見たことがないとよくわからないだろう。だが、料理経験者は当然の手順と理解できるだろ。
管理者にしかできない「こつ」があってその「こつ」は次回の発表に使うからここでは言うことができない(実は、おいしく召し上がっていただくためには、提供する直前に筍を盛りつけ熱い煮汁をそそぐのが「こつ」なのだ)。
「結果の写真は明るさとコントラストを変えて加工してあるけど、おいしく召し上がっていただいたという結論は正しいから、許されるのだ!」
小保方のレシピでは、今のところ誰も再現できないようだけど。