アーク溶接はなんのため?
熱電対はハンダ付けしてはいけないのだ。すくなくとも対になる金属同士をハンダ付けしてはいけないのだ。そこで溶接を試みたのだ。熱電対は何のため?当然、温度を測定するためだ。何の温度?当然ローストビーフのためなのだ。
本日は新年会。ローストビーフにするかローストポークにするか決めかねている。イベリコ豚のローストもおいしい。価格的にはローストビーフとたいしてかわらない。
できあがった、デジタル温度計だ。76μmのアルメル、クロメル・テフロン被覆線をアーク溶接し、エポキシ接着剤で強度を確保する。長さ100 mmの17Gステンレス管(外形 1.48 mm, 内径 1.12 mm)に入れ、根本は6 mmのステンレス丸棒を旋盤で加工したチューブに取り付けた。先端は斜めに削り、銀蝋(銀と銅の合金)で閉じ、その後、再度斜めに注射針のように加工した。ハンダ付けでもいいが、食品にふれるので鉛は避けたのだ。根本の6 mmのステンレス棒は途中まで 4 mm 穴をあけ中空にし、先端部は 1.5 mmの穴をあけてステンレスパイプをさす。ここはハンダ付けしか手段がなかった。オーブン温度は最高250度でハンダはこの温度では溶けてしまう可能性がある。溶解温度が高い鉛フリーハンダなんかもあるけど、手元にない。銀蝋では中にいれた熱電対の被覆が解けちゃう。接着してから熱電対を差し込めばいいのだろうが、径が小さいのでむずかしい。だから線をいれたままで接着したかったのだ。ここを銀蝋で接着しようとすると中の線の被覆が溶けちゃうからだ。
一番苦労したのはこの細い熱電対と太い線の溶着だ。リード線となる太い(300μm)熱電対にどうやって接続する?ここは原理的にはハンダ付けでもかまわない―熱電対の間にハンダが介在してもかまわない―が対になった方が両方とも同じように間に半田がないといけない。片側が熱電対同志が接着し、他方がハンダが間にあるということにするとこの接着部の温度で電圧が不均等に生じ、熱電対同志を溶着した先端の測定部の温度が正しく電圧に反映しない。両方とも同じようにハンダが介在していれば、この接着部の温度に依存した電圧は同じになるので差し引き0となって問題はない。しかしそのような接着はできないからここも溶接することになる。太い線と細い線の溶着は難しい。
鉛筆の芯で作ったアークを太い線と細い線の接触部で発生させると、当然ながら細い線のほうが早く溶け、太い線は溶けないので細い線が切断してしまう、結果として細い線がとけて玉になったものだけが太い線に残るだけだ。溶けたとき力が加わっていると切断されてしまう。そこで図にあるように細い線を太い線に巻きつけ、エポキシ接着剤で固定し、その後アーク溶接した。これで強度が保たれる。アーク溶接は、2本の鉛筆を用いて行う。前の図では溶接する線に電流を流して溶着させていたが、2本の先端を尖らせた鉛筆の間に溶接するものを置いてアークを飛ばした方がいい場合もある。太い線と細い線とかはこの場合にあたる。
回路図は以下だ。配線は至極簡単。熱電対専用IC とデジタルボルトメータ・キットと電源を接続するだけだからな。
デジタルボルトメータは秋月電子で買ったものだけど、マニュアルは信用できない。5Kオームの半固定抵抗で表示を調節するのだが、既存のデジタルボルトメータを校正器に使って調節しようとしたが、難しい。そこで多回転の半固定ポテンシオメータに交感した。小数点を示すLEDのマニュアルの説明は間違え。表示側から見て左がP1である、今回はICの出力が10mv/度なのでP3を使う。P1とP2は熱電対が断線したときのインジケータとした。電源が+5Vの単一電源なのでマイナス表示ができない。断線すると表示は00.0になるから0度付近なのか断線なのか明らかでないので2つの小数点LEDを断線時に点灯するようにした。測定精度をちゃんと校正するのは難しい。正確な温度計がないから。このまま、無調整(デジタルボルトメータは調整したが)で25度付近でほぼ正確な値を示すはず。0.1度まで目盛のある水銀温度計との誤差は1度以内だった