栗原潔 氏のバカンティ教授が宣誓供述書提出という記事があった。例の特許の申請だが、とりあえず却下され、これに対する申請者Vacantiからの反論だ。この1月が反論の締め切りだそうで、これに合わせた反論を宣誓供述書として提出したらしい。栗原氏の記事と重なるところがあるけれど、これを読んでみた感想を、成人の日という休日で暇なので書いてみよう。
「結論ありき」… ブログの2017年01月07日 STAP細胞特許のステータス更新にアクセス方法が書いてある。
The United States Patent and Trademark Office に入って絵にある文字列を入力して「14/397080」を検索し、Image File Wrapperのタブの「01-06-2017 AF/D.132 Affidavit-traversing rejectns or objectns rule 132」がそうだ。Affidavit が 宣誓供述書 という法律用語だ。8ページに渡る文書(imageになっている)だが栗原潔氏がpdfにまとめてアップしているからこれを利用したほうがいい。
1ページからの第1項はVacanti氏自身のキャリアの自己紹介だ。
1. That I Dr.Charles A. Vacanti received a B.A. at Creighton University, and completed his medical training at the University of Nebraska College of Medicne in 1975.
から始まる。自己のキャリアの紹介なので文の主語は I であるべきなのだが、最初の文から his medical training だって。my medical training だろうが。以下、ほとんどの文は I が主語なのだが、ところどころ、「He retired as Professor Emeritus at Harvard on January 1, 2016.」(どうやらハーバードは去年の1月退職したようだ)とか「by his lab」、「In addition, his work ….」など混在していて、この人大丈夫?なんて心配しちゃうところだ。
第3項では、「確かに私はNature論文の撤回にサインをしたが、殆どの著者は(STAP現象の)概念はいまだ有効であると思っている」さらに「私はNatureから、Natureは数人の(全員ではないということらしい)著者からの第1著者(小保方)が行ったエラーと潜在的(potential issue)な剽窃(plagiarism)と何枚かの写真のコンピュータによる強調(enhancement)のせいで論文を撤回することになったという宣言を、表明すると言われた。(つまり「Natureから、小保方が不正を行ったと著者らが言っていることを公開すると言われた。」ということだ。)Natureはまた、共著者の多くが(若山氏を除いた著者たちはのことらしい)公開されたデータは信頼できるものであると表明することに承諾した。」と表明している。
わかりにくいけど、Vacanti は小保方のせいだと直接は言っていない。Natureは他の複数の著者が小保方が不正をしたから撤回したといっているのだと言いたいらしい。potential issue of plagiarism とはなんだ?剽窃を柔らかく表現しただけだろ?
第4項では、「実は、項目3に述べたNatureの表明は正しくなく、7人の共著者の一人(若山氏)がデータに信頼がおけないと言っているから、すべての著者はSTAP現象を疑いなく現実に生じたものと言うことはできないとNatureは表明したのである。」と書いてあって若山氏が一人疑っているから撤回しただけだと言いたいらしい。共著者とは第1著者以外の7人だろ?
第5項では、「8人の著者のうちの6人(若山氏と誰かを除く6名だけどもう一人は誰だ?)の見方は論文撤回の理由は論文作成のエラーであって提示されたデータのエラーではないということである。」とあくまでも論文作成時のエラーで、データそのものに誤りはないと主張している。誰かとは、第1著者自身が不正を認めているから第1著者のこと?明らかにVacantiはこの6人の内の一人だろ。[ 追記 20170110 ] 笹井氏という考えもあるようだ(http://blog.livedoor.jp/peter_cetera/archives/11569947.html#comments 26. 一旅人)。笹井氏は捏造だったという再現実験の結果が出る前に発言できなくなったので、また石井委員会のときはエラーだと主張していたから、笹井氏というのは違うと思うけど。あるいはVacantiの間違えで「7人の共著者(筆頭著者を除く7名)のうちの一人=若山氏」と第4項と同じと言いたかったのかもね。
第9項以下では、「human foreskin fibroblasts(HFF cells)を使って、彼の研究室では機械的あるいは低酸素やATPによる酸のストレスでstress-produced stem cellを作ることに成功した」と主張している。
だから、この特許は成立すべきものだと主張しているのだ。
ひどい主張ですな。まともに自分のキャリアを説明できず、論文の撤回は、論文作成時の誤りのせいであって、実験結果に不正はなく、ヒトの細胞を使っての再現実験に成功していると主張するわけだ。
脊髄損傷サルがSTAP細胞で動けるようになったなどと言ったりする、いい加減な男ですな。こういういい加減な男のところで研究したヘンチクリンがこんな大騒ぎを引き起こしたということですね。早稲田、東京女子医、バカンティ研、理研と渡り歩くときに、どっかで引っかかってしかるべきところが、どういうわけかすりぬけちゃったわけで、最初のフィルターである早稲田、東京女子医でひっかかっていたら、PhDでもないボスの研究室でなかったら…とタラレバになっちゃうことになりますな。
[ 追記 ] 2017.1.10
Vacanti の主張が通らないのは;
1)Nature が公表した撤回理由書(Published online 02 July 2014 Corrected online 23 July 2014)に何の異議も申し立ててなく、特許の反論期限になって、あのNatureの発表はおかしい、当時Natureから言われたこととちがう、などと言っている。何故、2014年7月に異議を唱えなかったのか。
2)論文にもなっていない実験結果を根拠にするな。脊髄損傷サルで実験しているなんてことほざいていたよね。
3)理研の桂委員会の報告、検証実験の失敗を無視するのかよ。
ずっと思っていたのですが、筆頭著者とVacanti氏って性格傾向がよく似ていると思えて仕方がないのです。思い込みが強い、デタラメなことを平気で言う、データを示さないなど。Vacanti氏がSTAP細胞のプロトコルを発表したとき、ノフラーカルフォルニア大学准教授に、「著者名もデータも提示されておらず論評に値しない。」と切って捨てられていましたし、Vacanti氏もその下にいた小島宏司氏も論文にデータの使い回しや画像のパクリが指摘されていますからね。(11jigenさんのサイト)何か不幸な形で似たり寄ったりの人が出会って、妄想を倍加させて引き起こした騒動のような気がして仕方がないのです。ただそう言うにはあまりにもVacanti labに関する情報が少なすぎるのですが。
「結論ありき」のブログに書いて置きましたが、係争となりそうな部分には法律的に細心の注意が払われていると見ました。長年DOCKETを読んでいた身としては、懐かしいやらです。
あちらでは書きませんでしたが、絡繰りが透けて見えるような気がするのは職業病かも知れません。
CURRICULUM VITAEの部分は斜め読みしかしていませんが、かなり荒い文章だなという印象でした。
論文撤回の時点では、4月から丹羽先生の検証実験が行われている最中だったから、笹井先生も丹羽先生もSTAP現象を明確に否定することは立場上できませんでしたよね。検証実験が全く無意味だということになってしまいますから。STAP細胞疑わしいとはっきり言えたのはすでに理研を離れていた若山先生だけですね。大和氏は入院中で何も発言していないし、article論文の残りの著者は、Vacanti氏、弟のMartin氏、小保方氏、小島氏のVacanti一派ですからね。Vacanti氏の言い分が成立しないような。見方によっては大和氏もこのグループの一員とも言える立場ですね。
それでも笹井先生が「STAP現象を疑念なく整合性持って語ることは困難である。」とすごく遠回し表現ながら疑念を表明していることは重要だと思うのですが。
CVが何故必要なのかわからないのですが、自分で書いているうちに、第三者になっちゃったんですかね?
笹井氏の発言は2014年4月1日の、石井委員会の報告を受けてのコメントでは「刺激惹起性多能性獲得を前提としない説明が容易にできないものがあると私は考えており、(http://www3.riken.jp/stap/j/r2document10.pdf)」とまだ未練があったようですが、論文撤回が決まっての2014年7月2日のコメントでは「STAP 現象全体の整合性を疑念なく語ることは現在困難である(http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/topics/2014/20140702_1/140702_1_3_jp.pdf)」となったわけです。
私が思うに、4月1日の時点では、まだSTAP現象について、かなり疑いをというか、もうかなり否定的になったのですが、副センター長としての政治的な立場や、アノ姐さんがおっしゃる通り4月1日付けで検証実験を開始すると理研が決めた(http://www3.riken.jp/stap/j/e24document7.pdf)ので否定はできず、論文撤回にはまだなっていないし、という状況での発言だったのではないでしょうか。7月2日の論文撤回が決まった時点では、アノ姐さんのおっしゃる通り、すごく遠回しな発言でした。私はこの発言をご本人はほぼ完全にSTAP現象を諦めたと解釈しました。
遺言では、筆頭著者に励ましの言葉をかけるという律儀なことをしつつ、「”新しい人生”を歩んでください」と書いたのは、自らの失敗(筆頭著者を信じたこと)は自分の責任だけど、最大の原因は筆頭著者だぞと恨みを表現したのではないでしょうかね。
宣誓者の資格を文書内で担保する為、CVをつけることになっていると思います。うろ覚えので確言できません。
CVの部分ヴェンチャーキャピタルのセミナーでの講師紹介をベースにしたものです。検索ですぐ見つかります。
それにしても荒い、よほど急いだのでしょうか?
もうひとつVacanti氏の主張を否定出来る根拠があります。2015年9月24日のNatureで世界の7つのチームが再現実験をしたけれど再現できなかったことが報告されました。ここで重要なのは、イェーニュッシュ マサチューセッツ工科大学教授の報告です。彼はわざわざVacanti labまで出向いてVacanti氏と共同研究したにも関わらず再現できませんでした。(NHKスペシャルでイェーニュッシュ教授自身が証言しています。)つまりVacanti氏自身が再現できなかったという事実があります。小保方氏もVacanti氏もSTAPを主張している二人がともに再現できなかったのです。この重い事実を全く無視しています。
したがってVacanti氏の主張の根拠はありません。
上記コメントに誤りがありました。Vacanti氏と共同研究をしたのは、イェーニッシュ教授ではなく、Harvard大学のGeorge Daley教授でした。大変失礼しました。訂正させていただきます。
Vacanti 氏がここまで特許にこだわるのは、訴訟リスクがあるせいではないかと思いますね。Vacanti氏のLabというのは、寄付や助成金(たしか、成果があまり期待できないような研究への助成金も受け取っていた)で成り立っているみたいですから、研究の成果から収入があればそこから可能な範囲で返却するような条件はあるでしょう。成果が出ないのは許容範囲としても、研究そのものがfakeだったら詐欺です。小保方氏が「論文を取り下げるとVacanti Lab の人が職を失うので云々」と言っていたのは、Vacanti 氏では「論文がfakeで、論文を取り下げると云々(newyorker の記事 the stress test)」になっていたと記憶しています。そして、実際に資金上の問題でLabは廃止、Vacanti氏は退職となっています。ここで、特許が成立しないと研究それ自体がfakeだとして、Vacantiが訴えられる可能性が出てくるのを恐れているのではないかと思います。
アノ姐さん
特許申請の書類の 07-06-2016 Non-Final Rejection の12ページでは、いろんなところでプロトコルに従ってSTAP細胞作成を試みたがどこも成功しなかった。最後に、Alejandro De Los Angeles,…..& Q. Daley, Failure to replicate the STAP cell phenomenon, Nature 525, E6–E9 (24 September 2015) doi:10.1038 (http://www.nature.com/nature/journal/v525/n7570/full/nature15513.html) を引用して「 Vacanti laboratory where the original studies performed」でもできなかったと、アノ姐さんの御指摘通りのことが書いてあります。Vacanti はこれに対して何の応答もしていませんね。Vacanti の反論がやっつけ仕事で、時間稼ぎに、とりあえず締め切り直前に何か言っておこということなんでしょうね。何のために時間を稼ぐのか、わからないところがありますけどね。
> わかりにくいけど、Vacanti は小保方のせいだと直接は言っていない。
確かにVacantiが直接言った文面ではないですが、この宣誓書で実質的に追認した形になってしまったと思います、。
文頭に「In signing the agreement」とあって、「撤回合意書にサインするに際して」ネイチャーに言われていたわけですから、積極的ではないにしろ「小保方のせい」という文面の出版には同意していたはずと読めるからです。