平衡感覚は、内耳の感覚器(前庭の耳石器(球形嚢、卵形嚢))、視覚、足底などの皮膚の圧力感覚器、関節や筋からの深部感覚の情報を統合して体が傾いている等の判断を行うことだ。宇宙飛行士で現在無重量状態にある油井亀美也さんのTwitter に面白いコメントを見つけた。
油井 亀美也 Kimiya.Yui @Astro_Kimiya 8月16日
宇宙では、上下も関係ないのですが、実は地球のモックアップ(実物大模型)を使って訓練した時には、上下があった訳です。今も、モックアップが設置してあった時に下であった方向を下と感じる錯覚を覚えます。ISS内で訓練時と逆に立ってみると頭に少し血が上った感覚がして、方向感覚も狂います。
これを見ると、上記の感覚器からの情報だけでなく、記憶が重要な因子であることがわかる。つまり、様々な感覚器からの情報とこれまでの経験値とを常に比較対象し判断しているようだ。脳血流の変化を検出する受容器は知られていないから、「頭に血が上がった」という感覚は顔面皮膚・筋のうっ血のよる皮膚・筋の機械受容器からの情報によるものだろう。その記憶がよみがえるようだ。
脳の中では、これまでの経験から、これらの末梢神経からの情報を統合すると、重力の存在する地球上では体はこういう姿勢(位置)にあるべきだと判断するのだろうな。しかし、そのあるべき状況と異なる現象を感じると違和感=宇宙酔になるのだろう。