これは手抜き工事だよな

大学の実習室に流しがある。その下は、両開きのドアの付いた収納場所になっている。普通の流しだ。ここに何も収容していないので、滅多に開けることはない。
今日、この観音開きのドアをたまたま開けたら、一つがコケた。蝶番のネジが外れていたのだ。
20150423sinnk_door
蝶番となる金具が1枚のドアにつき上下2ケあるわけだが、よく見たら、上の蝶番を固定するネジが1本しかない。上の写真の赤丸がネジ止めのネジがあって止まっているわけだが、黄色丸のところに木ねじがない。コケたドアは上の蝶番の赤丸のネジが取れてなくなっていたので、上の蝶番が固定されず、ドアを開けるとこけちゃうのだ。このドアだけか?と思って10枚あるドア全部をチェックしたら、全てのドアで、上の蝶番はネジ1本でしか固定していない。そんなばかな。あきらなな手抜きだ。
しょうがないから全てのドアについて、木ネジでさらに固定した。
最初の納品で取り付けたたとき、明らかにネジ止めの手をぬいたわけだな。ひどいね。

1回の活動電位で出入りするイオンの量

どの医学系の大学でも、生理学の講義の2,3回目くらいは興奮性細胞の活動電位がどうやって発生するかだ。
学生が質問してきた。「活動電位が発生するとNaイオンが細胞内に蓄積する。その量はどのくらいだ?量が多かったらまずいじゃん。」
ごもっともな、良い質問だ。すでに2回目の講義でNa-Kポンプの説明を行っていたから、この質問に対して返事ができる。「大した量ではないし、ポンプで排出されるんだよ」だ。
しかし、実際に計算したことなぞなかったから「大した量」の根拠がない。細胞内のKイオンの量に比べ1回の活動電位で細胞外に出て行くKイオンの量なぞ、ものすごく少ないというのは当たりまえだと思っていたからだ。それでもオーダー位は計算して見る価値がある。
細胞外から入り込むNaについては、一個の細胞に対して細胞外の溶液の量は無限大に近いし細胞内Naの量は小さいから、細胞内から出て行くKイオンについて計算してみよう。細胞内のKイオンは有限だからな。以下の計算は合っているかな?だれか誤りを指摘してくれ。
[ 追記 ] 2015.11.14 在米ポスドクさんが誤りを指摘してくれました。以下に訂正しました。在米ポスドクさんありがとうございます。訂正前は青字でそのまま残しておきます。
細胞の直径を20 μmとして計算するとき、その半径10 μmを10 mm-2とすべきなのに 10 mm-3としたのが誤りの原因です。その他の値も原著に忠実にして、それらしくしたので、少し値が違いますが、大筋はかわっていません。
1回の活動電位が発生すると4.7 pmol/cm2のNa+が細胞内に入り6.6 pmol/cm2 のKが細胞外に出る(Keynes, 1951, http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1113/jphysiol.1951.sp004608/epdf)。これは昔のイカの巨大軸索で実施した放射性同位元素を使った実験のデータだ。これくらいしか根拠がみつからない。NaとKの出入りが1対1ではないじゃん、という議論は別にして、5 pmol/cm2が出入りするとしよう。下記の仮定がいい加減だから有効数字は1桁で計算しちゃうのだ。1 cm2 は 100 mm2したがって以下では、1回の活動電位で 5 ×10-2 pmol/mm2のNaが細胞内に入り、同じ量のKが細胞外に出るとするのだ。
球形の細胞の直径を20 μmとすると、半径は 10μm すなわち 10 mmで 細胞の表面積は4πr2だから4 x 3.14 x (10-)2 = 12 x 10- mm2。イカの軸索の細胞膜のNaチャネル密度が同じだとして計算するのだ。
1個の球形の細胞が1回活動電位を出すと
5×10-2 [pmol/mm2] x 12 x 10 [mm2] = 60 x 10pmol
つまり、6×10-5 pmolのNaとKイオンが出入りする。
1 mol のイオン数は6x1023 個でp(ピコ)とは10-12 だから1 pmol とは6×1011個のイオンになる。
6 x 105 x 6 x 1011 =36 x 106個のイオンが出入りすることになる。
細胞内のKイオンの濃度は160 mmol位だ(2回目の講義資料)。細胞内液 1 L に160 x10-3 x 6 x 1023 = 960 x 1020 個のKイオンがあるということだ。直径20μmの細胞の体積は4/3πr3 だから4/3×3.14×(10-2)3 mm3である。
1 mm3 は 10-6 L だ。細胞の体積 4×10-6 mm3 は 4×10-6 x 10-6 = 4 x 10-12 L だ。
160 x 10-3 x 1023 x 4 x 10-12 =640 x108 個、つまりが細胞内にKイオンは640 x108 個ある。
36 x 106 個 ÷ 640 x108 個 =0.056 x 10-2
0.06% 変化する。
1回の活動電位が発生すると4pmol/cm2のNa+が細胞内に入り同じ量のK+が細胞外に出る(Keynes, 1951)。これは昔のイカの巨大軸索で実施した放射性同位元素を使った実験のデータだ。これくらいしか根拠がみつからない。1 cm2 は 100 mm2したがって1回の活動電位で 4×10-2pmol/mm2のNa+が細胞内に入り、同じ量のK+が細胞外に出るとする。
球形の細胞の直径を20 μmとすると、半径 10μm は 10 mm-3で 細胞の表面積は4πrだから4 x 3.14 x (10-3)2 = 12 x 10-6 mm2。イカの軸索の細胞膜のNaチャネル濃度が同じだとするわけね。
したがって1個の球形の細胞が1回活動電位を出すと
4×10-2 [pmol/mm2] x 12 x 10-6 [mm2] = 48 x 10-8pmol となり
48×10-8pmolのNaとKイオンが出入りする。
1 pmol とは6×1023 x 10-12個のイオンだから(「単位の話」を参照)
48 x 10-8 x 6 x 1023 x 10-12 =288 x 103個つまり約30万個のイオンが出入りすることになる。
 
細胞内のKイオンの濃度は160 mmol位だ(2回目の講義資料)。細胞内液 1 L に160 x10-3 x 6 x 1023   = 960  x 1020 個のKイオンがあるということだ。直径20μmの細胞の体積は4/3πr3 だから4×10-9 mm3である。
1 mm3 は 10-6 L だ。細胞の体積 4×10-9mmは 4×10-9x10-6 = 4 x 10-15 L だ。
160 x 10-3 x 1023 x 4 x 10-15 =640 x105  個、つまり6千400万個のKイオンが細胞内にある。
288 x 103個 ÷ 640 x105  個 個 =0.45 x 10-2 ≒ 5 x 10-3
0.5% 変化する。
別の推測によると「イオンの流出量は軸索内部に存在するKイオンの約1万分の1である」だ。こんなもんかな?
なんか大きすぎるようなきがするけど。おなじようなオーダーだな。
どちにしろ、有効数字が1桁の概算で、1回の活動電位が細胞内のKイオン個数に及ぼす影響はほとんどないだろうで、事実ない。