組織に流れる血流を調節するのは毛細血管の手前の細動脈の収縮の程度である。血液と組織の細胞を取り巻く液体(間質液、組織液、細胞間液)との物質交換は毛細血管で行われる。細胞との物質交換は間質液とで行われる。
交感神経系と副交感神経系は対立した神経系であるとしばしば説明される。これには、支配している器官に対して逆の作用を示す神経系ということと、両方の神経の活動は相反的(一方の活動が増えるときは他方のそれは減る)ということを混ぜて説明していることが多い
一番わかり易いのは心臓に対する両神経系の作用と活動である。交感神経は心臓に対し、心拍数を増やすという心臓の活動を亢進させるが、副交感神経は心拍数を減らすと抑制的に作用する。心拍数を増加させるような状況、非常時、ストレスがかかったときは心臓交感神経活動が増え、副交感神経である心臓迷走神経の活動が減る。
ここまではいいのだが、組織への血流を調節する細動脈についてはこれが当てはまらない。細動脈にある平滑筋は交感神経の支配しか受けていないのである。解剖学的に考えても、筋や皮膚の血管へ副交感神経はどこから行くのであろうか。
したがって、このようなTVでの説明は誤りである。細動脈の平滑筋は、交感神経が常に活動しているから、常に収縮状態にあり、交感神経活動が更に増えればさらに収縮して血流が減少し、常の活動より減ると血流が増加するのであって、この図のように副交感神経系が血管を弛緩させて血流が増えるわけではない。
この図は、TVのワイドショーで高倉伸幸氏が解説していた図である。彼は医師だが血管の増殖等の研究の専門家であって、自律神経系の専門家ではない。彼に限らずネットのサイトでも同様の間違いが平気で書いてある。
交感神経と副交感神経が逆の作用を持ち、一方が増えるときは他方が減るという図式は理解しやすいし、心臓という重要な器官については、正しいことが多い(両方の活動が亢進することもある)ので、これを血管に当てはめると説明しやすい、理解しやすいのだが、このような過去の誤った概念はそろそろ捨ててもらいたいですな。
看護ルー 高血圧症の理解に重要な血圧のしくみでは「血管には副交感神経の支配はありませんが、副交感神経が興奮すると相互作用により、交感神経の興奮が弱くなるため、血管は拡張します。」と副交感神経が血管を支配していないと正しい説明をしていますが、図3は誤解を招く説明です。確かに「神経性因子による調節」時に交感神経、正確には心臓交感神経と血管収縮神経と副交感神経=心臓迷走神経の活動は相反しますから、心臓迷走神経活動が増加するときは、交感神経血管収縮神経の活動は低下し血管は拡張しますが、これは血管の副交感神経(そんなのはごく一部の例外にしかありません)が活動した結果ではありません。