さて、なんのために鉛筆溶接機とか熱電対温度プローブを作ってきたかというと、このローストポークのためなのだ。
まずは出来上がりを御覧くださいませ。
ふふふ。美味しいねー。
基本的にはローストビーフと同じなんだけど、豚肉では未経験なのやってみましたよ。
ローストポーク・レシピで検索すると、肉の大きさxx kg、オーブンの温度yy 度でzz 分とかになっているけど、肉の大きさもオーブンの種類も大きさも毎回、あるいはお宅によって異なるわけで、何度で何分というのは参考にはなるが、実際にはは不安になる。なんせ肉の塊を焼くなんてのは、アルゼンチンでは普通かもしれないが日本の家庭ではめったにないことだからね。肉の塊は高価だからね。
原則として、豚肉は火を通すということになっている。牛肉は生でもいい(嫌いな人はいるけどね)。火を通すということは、寄生虫を殺すという意味なので、清潔な飼育環境にある日本の豚には寄生虫がほとんどいないのではと思うのだが、蛋白が凝固する温度にすればいいということと解釈するわけだ。つまり60度になればいいでしょということなのね。
温度が高すぎると、ぱさぱさとなってまずくなる。だから60度程度に加熱するということにするのだ。そのための、6,70度程度の低温で長く加熱するコンフィなんて方法もあるけど、やってられない。気が短いからね。万が一、生でいやだといったら、あとで電子レンジで加熱すればいい。
まずはマリネします。500 gくらいの肩ロースです。
塩コショウしてすりおろしニンニク(チューブに入った市販の)ローズマリーをちぎって、
オリーブ油をたらしてポリ袋の中に。30分でも一晩でも、期間はいい加減です。
タコ糸で縛っていますが、縛らなくてもいいですね。作成した温度プローブの先端が肉に中心に位置するように刺します。
今回のオーブンは200度に設定しました。時間は肉の大きさできまるのですが、温度を見てオーブンの電源を切るので30分とかにとりあえず設定して置きます。
オーブンの電源を入れ(予熱とか、基本的には関係ないのですが、オーブンの仕様でこれを実施しないといけないのかも)、温度変化をモニターするわけです。
ローストビーフのときは40度でオーブンの電源を切りましたが、今回は45度にしてみましたというより、手をぬいていたら45度くらいになってしまいした。
オーブンの電源を切ったら、オーブンのドアを開け放したまま放置しました。取り出して放置でもかまわないでしょ。
で、その後、熱源を切っても、肉の中止部の温度は徐々に上がっていき、目的の60度近傍まで上昇しました。このあと冷えてきたらアルミ箔で包んで室温放置ですね。
切り分けると
ということになります。
トマトソースは、にんにくとたまねぎのみじん切りをオリーブ油で炒め、ホールトマトの缶詰とかを加えて、コンソメキューブを1ケ加えて、白ワインも加え煮詰めたものです。ローズマリーを添えましたよ。
中心部が70度以上になるとぱさぱさになっちゃうかも。ピンクなのがいいので、白くなっちゃうと美味しくない。というわけで肉の大きさにかかわらず、中心部が60度にすればいい、そのためには45度をこえたら加熱をやめるという方法は完成したということにします。この方法のためには、温度プローブを肉に刺したまま、つまりオーブンの中に入れておかねばならないというわけですね。
成功したので、次回の女子会はイベリコ豚のローストポークを予定しましょ。参加したい方は手を上げて。
温度が低すぎるのではというご意見をいただきました。確かにちと低い。でも食べちゃった。良い子はまねしないように。
いつも楽しく拝見させていただいております。
ローストポークの件ですが、E型肝炎ウイルスの失活条件を考えると
もう少し加熱時間を長くするか、少し温度を上げるかをされたほうが
良いのでは無いでしょうか?
少し古い資料ですが食品安全委員会のレポート
http://www.fsc.go.jp/sonota/risk_profile/hevirus.pdf
>6,70度程度の低温で長く加熱するコンフィなんて方法も
>あるけど、やってられない。気が短いからね。
同感です。我が家ではローストビーフもポークも炊飯器の保温モード(我が家の場合、実測で72度、前後5度程度の幅あり)でお湯をはり、電子レンジで室温程度に戻した肉をビニール袋に密閉し、牛肉で45分、豚肉1時間程度で保温調理でやっています。
温度調整は炊飯器がやってくれるので、簡単ですよ。
荏子田のおっさん さん
コメントありがとうございます。紹介していただいたレポートを中心に文献を読んで考察してみます。
食品安全委員会のレポートの3ページ「USDAでは生鮮ブタ肉の加熱調理に際して、中心温度を71°C以上とすることを推奨しいる(参照13)」とあります。しかし;参照文献13
Feagins AR1, Opriessnig T, Guenette DK, Halbur PG, Meng XJ. Inactivation of infectious hepatitis E virus present in commercial pig livers sold in local grocery stores in the United States. Int J Food Microbiol. 2008 Mar 31;123(1-2):32-7.
は米国の商店で販売されている豚肝臓に含まれるHepatitis E virus (HEV)の不活性化の条件を調べたもので、端的に言っちゃうと、56℃、1時間ではだめで、71℃、5分の加熱で不活性化されたというもので、十分な加熱が必要だと結論しています。ウイルスが主に存在する肝臓を対象としたもので、肉の中心部を71℃以上にしろとは言っていませんね。
Yazaki Y1, Mizuo H, Takahashi M, Nishizawa T, Sasaki N, Gotanda Y, Okamoto H. Sporadic acute or fulminant hepatitis E in Hokkaido, Japan, may be food-borne, as suggested by the presence of hepatitis E virus in pig liver as food. J Gen Virol. 2003 Sep;84(Pt 9):2351-7.
は北海道の商店で購入した363パッケージの豚肝臓では7パッケージ(1.9%)でhepatitis E virus (HEV) で検出されたという報告書です。
この報告書を
(1)E型肝炎ウイルスの感染者は圧倒的に北海道に多い。
(2)野生のシカ、イノシシの生肉が感染源であることが多い
(3)豚ではE型肝炎ウイルスは肝臓と糞便に多く存在する
(4)なぜか国内では出荷の月齢6ヶ月の豚に抗体は陽性だがウイルスがいない
と大雑把に要約しちゃうと(こうやって端的にまとめちゃうと一研究者・教育者が怒るんだよね)、
(1)野生のシカ、イノシシ肉、市販の豚肝臓の加熱が不十分なものは、特に北海道では食うな。
(2)肝臓は63℃で30分間相当以上の加熱が必要(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/08/h0819-2a.html)
今回のような豚肉を60℃そこそこを5分程度では、もし、E型ウイルスが肉に存在したらやばいことになる可能性がある。70℃5分だったら大丈夫だろう、
管理人は北海道に居住していないので、今回は肝臓ではなく、豚肩ロースなのでE型肝炎ウイルスが存在していた可能性は低いので大丈夫だろうと結論しました。
これまで、同一肉屋から購入した豚肉を、とんかつ等の肉に厚さがある料理で肉の断面がピンク色までということはよくあること(そのほうがおいしいから)なので、もしE型に感染していたら、今回が原因と断定できないですね。ちなみに豚レバーはこの2、3年調理していないな。
次回は最終到達温度が70℃になるように、つまり50℃になったらオーブンの電源を切り放置するをトライしてみます。このとき、最終温度がどのくらいになり、肉の色がどうなるかをテストしてみます。
炊飯器等の保温機能のある機器で、袋に入れ、温水で加熱という調理方法は知っていますが、やったことはないです。どうしても表面には焼き色がほしいわけで、加熱の先にか後に肉の塊をフライパンで焼く必要があると思います。炊飯器でも肉中心部の温度は炊飯器のお湯の温度ではないので、肉の大きさによって加熱時間が異なるのでは?だから今回の様に肉中心部の温度を測定することに意義があると思っています。肉の中心部を70℃で長時間調理しても美味しいの?という疑問がありますね。どうなっちゃうんだろ。
sighさん
おはようございます
>(1)野生のシカ、イノシシ肉、市販の豚肝臓の加熱が不十分なものは、特に北海道では食うな。
これですが・・・・
厚労省からこんな情報も出ています。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000138834.pdf
北海道も確かに多いですが、近年特にジビエブームの影響で
関東(都内)でも感染発生が増えている様です。
イノシシ・鹿は野生で、豚はコントロールされ飼育ているので
同列の危険性とは言え無いかも知れませんが、、、、
猪鹿蝶にまねて「いの・しか・トンは生で食うな」と
私の周り(?)では、言われています。
北海道で前からE型肝炎が多いのは「名物のジンギスカン」で、
あの独特の形の鍋に羊の肉をもやしやキャベツの上に載せて
焼く食べ方で、半焼けの羊肉や焼いている時に出る温度の低い肉汁のついた野菜、
血のついた箸からウイルスを食べてしまうためとの聞いております。
>加熱の先にか後に肉の塊をフライパンで焼く必要があると思います。
まさにその通りだと思います。
私の場合は、低温調理後に強く加熱したフライパンで表面に焦げ目を付けています。
このほうが、焼いた香りが肉について良いです。
(低温調理前だと、調理中に出てきた肉汁で香りも消え
見た目の焦げ目も、良くわからなってしまいます)
なお調理中、肉の内部温度管理は、中華系電子部材(?)で有名な末広町の
aitendoの「肉にぶっ刺すタイプのクッキング温度計」で
時々様子(温度)をみています。
熱電対とは精度が全然違うでしょうけどね。
以上で豚肉と低温調理については最後にします。
sighさんのブログをいつも楽しく読んでいます。
これからも頑張ってください。
荏子田のおっさん さん
コメントありがとうございます。いろいろ勉強になります。
『aitendoの「肉にぶっ刺すタイプのクッキング温度計」』が、「Hommy デジタル クッキング温度計 油/お肉/ミルク/揚げ物/お茶/ハンバーグなどの温度管理 本質的なベーキング TP101」 だったら 安!! 200円しない。送料のほうが高い。炊飯器の蓋を開けて、加熱調理だったらこれで十分ですな。しかしオーブンの中には入れられない。
オーブンで焼きながらの温度測定にこだわっているので、このまま続けます。次回はもうすこし温度を高くした例を掲載します。
なるほど、「札幌圏内小流行4型HEV株が検出された茨城県内E型肝炎の1例」という症例報告がある。北海道旅行で感染したとのことだけどジンギスカンかどうかはわからない。羊にE型肝炎ウイルスがいるという報告はあまりないようで、ヒツジに抗体はあるがウイルスは検出されなかったということで、ジンギスカンの生血から感染という可能性は殆ど無いと思えます。