博士号の取り消し

普通の大学では博士号を「不正手段で得られたものは取り消すことができる」となっている。当然ですな。ところが、「学位を授与された者がその名誉を汚す行為をおこなったとき」という項目が多くの大学であるらしい。一研究者・教育者の意見 というブログで 43. 在米ポスドク さんが調べてコメントに記述している。

東京 不正
京都 不正・公表の不履行
大阪 不正・名誉
東北 不正・名誉
名古屋 不正・名誉
九州 不正・名誉
北海道 不正
東京工業 不正
筑波 不正・名誉
広島 不正・名誉
千葉 名誉・不正
岡山 不正・名誉
神戸 不正・名誉
東京医科歯科 不正・名誉
金沢 不正・名誉

やばいじゃん。管理者も姿勢を正さないと。

どうして審査会提出版すらないの?

「公聴会時論文が合格相当である」は公開の博士論文審査のときの判定として普通である。しかし、公聴会は一般公開だから、主査などの審査員や、他のフロアの聴取者からの質疑に対する応答、議論が当然ある。これらの議論を踏まえた必要な「(誤字脱字を含めた)修正が行われた論文が提出されたら」というのが、この「合格相当」の一つの意味である。
もう一つは形式的で、正式には教授会(あるいはその上の大学院を取りまとめる大学全体の組織)が合格認定するので審査会では決定できないので「合格相当」ということになる。
後者はほとんど形式的なので別にして、主査は審査会終了後、訂正がなされたら合格と申請者に伝える。そのあと改訂点をリストした書類とともに、改定版を主査、副査に提出し、改訂がなされたことが確認されたら、主査が教授会に主査、副査の署名捺印のある審査報告書を提出し、教授会で博士号の授与が承認されるという手順になる。
ちなみに教授会での賛否は投票なわけで、ほとんどの教授は専門が異なるのでその論文を理解できないわけで、賛否の拠り所は指導教員にある、つまり指導教員の評価になるわけだ。満票で承認されると、当の学生ではなく指導教員が喜ぶわけだ。
これが普通の博士論文審査の過程だと思う。早稲田は知らんけど。
というわけで、国会図書館に保存されている博士論文が、審査に提出したものであってもおかしいわけで、それがさらに以前の草稿が製本されて存在するというのはありえないことと、博士論文審査に関わっている人たちは思うわけね。そんな草稿は自分自身が1部持っているだけで、これに手書きで加筆したりするものなわけで、これを複数部印刷することもありえないわけだ。したがって審査に提出した論文すら存在したのだろうかと疑問に思うわけだ。審査も関係者ばかりだったので、審査に提出した論文がこの「草稿」であっても、審査員はろくに読みもしなかったのではと疑われる。審査に提出した電子ファイルも紙ベースの論文も捨てちゃったんだろうか?普通は電子ファイルはどこかにバックアップされているはず…
草稿にしても他からの図をコピペというのもありえないのだ。こういうイメージの図というのを手書きにして仮置きするのだ。審査会に提出した論文は、この草稿であって、本当に自分で書いた論文はなかったのでは?だから審査会で指摘された点を修正した論文もないわけで、口頭で「合格相当」と言われたもんで、そのまま走っちゃたんだよね。だれもチェックしないのを知っていたわけだ。すごいね。
この改訂版の確認を主査以下が行わなかったので審査員にはペナルティを与えられたわけだ。
小保方は、もしあるのなら、その改定された本来の製本されてしかるべき版を再提出して差し替えて貰えばいいのに、印刷もしていなかったようで、電子ファイルもない(日付で判定できなかった)わけだ。製本は複数冊行うのが当然で、ご自身が黒表紙金文字の製本された論文を持っているはずだ。どうです?読者で博士号を持っている方は自分自身の黒表紙金文字の博士論文を1冊持っているでしょ?
自分で製本された論文を見たにちがいないわけで、その時点でミスがわかったはずだ。
審査委員会直後の修正した論文さえあれば、なんとか差し替えですんだわけだが、それがない=修正されていない ということなんでしょ。
論文内容は「合格相当」と調査委員会での判定はあったけど、適切な処理がその後なされていないので「不正相当」とされたわけだ。早稲田も苦しいけど超法規的に対処したのね。その原因はズボラな小保方とチェックすら行わない主査以下の教員両方にあるのだ。

あなたはどっちの言い分を支持する?

小保方は早稲田大学の博士号を取り消され、その通知を10月30日午後受け取り、11月2日の早稲田大学の記者会見に先立って、怒り狂った声明を発したわけです。

●今般の早稲田大学の決定について
2015年11月2日
小保方晴子
私は、学位論文について、実質的な審査対象論文と異なった初期構想時の論文を誤って提出したことに対し、論文訂正と再度の論文指導を受ける機会を与えて頂きました。このため、大学設置の調査委員会によって指摘された問題点をすべて修正して論文を再提出したところ、このたび、前回の授与時判断と異なった結論を出されました。
昨年、総長からは、指導過程および学位授与の審査過程に重大な不備・欠陥があったとの理由から、猶予期間を設けて論文訂正と再度の論文指導を受ける機会を与えるとし、これが適切に履行された場合には取り消さず学位を維持する、とのご決定を戴きました。私はこれに従い履行したにも関わらずの今回の決定には失望しています。
このような経緯の下での今回の判断は、総長のご決定の趣旨及びその背景にある大学調査委員会報告書のご意見に大きく外れるものであり、学位規則の取消要件にも合致しないものであると思います。
前回の学位授与は、私の在学中に研究活動を指導し研究の進捗状況等の報告をさせて頂いていた教官の先生方らによって、正式な審査過程を経たうえで授与されたものです。しかし、今回の同じ研究科における再度の審査過程では、今回の修正論文は博士に値しないとされることは、前回の授与時判断と大きくかい離する結論であり、指導過程、審査過程の正当性・公平性について大きな疑問があります。
今回は、修正論文提出前から、担当教官によって、「今回は合格する可能性はとても低い」と伝えられ、不合格の理由においても、審査教官から「博士として認めることのできないのは一連の業界の反応を見ても自明なのではないか」とのコメントがあり、学術的な理由とはかけ離れ、社会風潮を重視した結論を出されたことは明らかです。また、今回の修正作業は、入院中、加療中での修正作業となり、思考力・集中力などが低下しており博士論文に能力を発揮できる健康状態ではないとの診断書を大学に提出しておりましたが、ほぼ6年前の米国に保存されている研究資料を提出することなどを求められ、しかも厳しい時間制限等が課されるなど、心身への状況配慮などは一切なされず、むしろそれが不合格の理由にも採用されました。
修正論文提出後、「審査教官とのやり取りは始まったばかり」との説明を受けましたが、一回のやり取りだけで不合格の判定をされ、それに対する私の意見も聞く耳を全く持って頂けない状況でした。これでは、当初から不合格を前提とした手続きであり、とても不公正なものであったと思います。この点については、大学にも改善をお願いしましたが、残念ながら聞き入れて頂けませんでした。
博士論文の骨子となる内容はSTAP研究の足掛かりとなった研究成果であり、理研で行われた検証実験においても一定の再現性が認められているものです。
博士論文執筆当時、この研究が広く役立つ研究に成長していく事を夢見て日々を過ごしていました。私の研究者の道は不本意にも門が閉じられてしまいましたが、いつか議論が研究の場に戻る日を期待し、今回の再提出した博士論文や関連するデータは年度内をめどに随時公開して参る所存です。
以上

これに対し早稲田大学は小保方の声明は事実ではないと、反論を発したのだ。

早稲田大学の決定に対する小保方晴子氏のコメントについて
Posted Wed, 04 Nov 2015
早稲田大学は、2015年11月2日、小保方晴子氏の博士学位の取消しに関する記者会見を行いました。この直前に、小保方氏は、代理人を通じて、本学の処分に対するコメントを発しておりますが、そこには事実と異なるいくつかの点と誤解と思われる指摘がありますので、以下に主要な4点について本学としての見解をお示しいたします。
第一に、小保方氏は、前回の学位は正式な審査過程を経たうえで授与されたものであるにもかかわらず、今回の論文訂正において訂正論文が博士に値しないとされたことは、前回の授与時の判断と大きくかい離する結論であると主張されています。
しかし、小保方氏が審査対象となったものとは異なる論文を提出したことを受けて、本学は昨年10月6日の決定をもって、再度の論文指導などを行ったうえで、本来提出されるべきであった論文になるよう訂正を求めた次第です。したがって、2011年に実施された学位審査の基準と今回の決定に至る論文訂正の水準は、本質において何ら変わることなく、ただ「博士学位にふさわしい」論理的説明が科学的根拠に基づいて行われているかという点に尽きます。残念ながら、今回の論文指導は、小保方氏の事情によって十分な時間を取ることができず、指示された訂正作業を完了できないままに猶予期間が満了するに至ったということであり、本学として審査の基準を変えたわけではありません。むしろ、博士学位にふさわしい論文としての水準を低く設定するようなことがあれば、学位授与機関としての本学の博士論文審査の信頼性が問われることになると同時に、小保方氏ご本人の研究に対する信頼性も揺らぐことが危惧されるのであり、それはご本人にとっても不本意であろうと思われます。
第二に、担当教員によって「今回は合格する可能性はとても低い」、「博士として認めることのできないのは一連の業界の反応を見ても自明なのではないか」とのコメントがあり、学術的な理由とはかけ離れ、社会風潮を重視して結論を導いたと主張されています。
しかし、これらのコメントは前後の文脈を無視した引用であり、前者は、指導教員が、最初の面談で、「提出すれば必ず合格するというわけではないので、合格できるよう修正していきましょう」と言ったことを指していると推定されます。後者は、「不明瞭な疑惑がひとつでもある場合、またそれを解消する姿勢が著者に見られない場合、信頼できる博士および論文として認めるのは難しいことは、昨年の一連の業界の反応を見ても自明なのではないか。」という改訂稿に対する指摘の一部だと思われます。これはまさしく博士学位論文においては科学的根拠や論理的記述が十分に行われることが必要であることを指摘したもので、予断をもって指導に臨んだことを意味しません。
第三に、入院中、加療中での修正作業となり、思考力・集中力などが低下しており博士論文に能力を発揮できる健康状態ではないとの診断書を大学に提出していたが、心身への状況配慮などは一切なされなかったと主張されています。
確かに、小保方氏から診断書は2回提出されていますが、2回目は本学の側から提出を依頼したものです。本学は、むしろ論文指導が小保方氏の健康状態に大きな影響を与え、取り返しのつかない状況に至ることを慮り、それゆえに医師の診断結果を考慮しながら対応することを常に心がけてまいりました。医師より医学的観点から論文指導の停止を求められ、それに従うこともやむを得ないと考えながら、その範囲内でご本人の論文訂正をされたいという意思を実現すべく努力をしてきたところです。通常は、指導教員の側が学生を訪ねて指導を行うことはありませんが、小保方氏の健康状態に対する特別な配慮をもって、これを実施いたしました。
第四に、修正論文提出後、一回のやり取りだけで不合格の判定をされ、それに対する意見も聞く耳を全く持たない状況であり、当初から不合格を前提とした手続きであったと主張されています。
しかし、会見でも明らかにしたように、指導教員等は3回にわたり小保方氏のもとを訪れて直接の指導をし、また、20通を超えるメールのやり取りや電話によって、論文の訂正に係る指導が行われており、事実、小保方氏からは最初の草稿以降に3回改訂稿が提出されております。
本学としては、小保方氏と争うことは全く考えていません。小保方氏の指摘のように「社会風潮を重視した結論」を出すのであれば、1年前に博士学位の取消しを即時に実施したでしょう。しかし、本学は「教育の場として学生の指導と責任を放棄しない」という信念から、「一定の猶予期間(概ね1年間)を設けて再度の博士論文指導、研究倫理の再教育を行い、論文訂正させ」ると決定をし、本年に至る論文指導を行ってきたところです。小保方氏もご自身のすぐれない健康状態のなかで最大限の努力をされ、また本学の指導教授も例外的な配慮を払いながら指導を行ってまいりました。しかし、残念ながら、両者の努力が十分な結果を得るに至らないまま猶予期間が満了してしまいました。それは、教育の場としての本学にとっても辛い結果ではありますが、これは学問の府として揺るぎない基準をもって博士学位にふさわしい論文を評価するとの姿勢の帰結でもあります。
早稲田大学は、学位授与機関としての信頼を回復すべく、また同時に教育機関としての責任を全うできるよう、今後も努力してまいります。

早稲田の言い分に分があるね。小保方の元に出張指導しに行った教員は、ものすごく慎重な行動をすべきである、揚げ足をとられるような言動は許されない という自覚があったにちがいない。そのような教員が、「STAP論文の事件から業界の雰囲気をみれば取り消しが取り消されないのは自明でしょ」なんて死んでも言うわけがない。言うのは無責任な学部学生くらいだ。メール交換20回、論文訂正3回という早稲田の主張は、こういう数を明確に言うだけの証拠があるわけで、小保方の1回の根拠はわからない。医師の診断も早稲田が依頼したももあるというのはこの声明で始めてあきらかになったことで、早稲田がそれなりに気を使ったことがわかる。
小保方は怒り狂って、データや博士論文原稿を公開するらしいけど、恥をかくだけだな。このような状況では、素人を含めたあらゆる人がボロクソに叩くに違いない。同じ分野の研究者は評価すらもしないだろう。自分の実験でいそがしいもんね。実験ノートを公開したときのようになっちゃうよ。
だけど年度内なんていったもんで、もうこれでおしまいと思ったけど、まだ5ヶ月くらい、ネットの好事家を楽しませてくれるのだ。

センセのほうが出向く

早稲田の記者会見では、複数の大学教員が3回にわたって小保方のところに行って指導したといっているが、小保方の言い分は1回だけ
小保方は「入院中、加療中での修正作業」だから猶予しろといったが、美容院で髪を切っている(2014年12月)。
11月末には再現実験が失敗に終わり、その後、時間があったにもかかわらず、5月末まで大学の問い合わせに答えなかった。で時間がたりないから延長しろとはね。自分で大学に行くのではなく、大学教員が出向いたんだぜ。偉いよね。
まだ、この「事件」は続くのであろうか。博士取り消しを裁判にもっていくのだろうか。みずほ中央法律事務所のページでは「博士号等の認定における論文内容の判断は司法審査の対象外とされる」という最高裁の判例があって司法審査の対象外だそうだ。だから訴訟対象にならないのとおもうけどね。
弁護士がついていたんだから、1年間の猶予期間になにをすべきかを、具体的に文書でもらっておけば、よかったのにね。早稲田の要求は当然「博士学位論文として相応しいものになった」とあいまいなんだからな。早稲田はハードルの高さを自由に操作できる立場なんだから、これを防ぐ手立てを考えるのが弁護士だろうが。
早稲田大学の調査委員会が、Tissue Engineering とかいうVacanti が自由にしている雑誌に投稿したretractになってしかるべき訂正まみれの論文があって、一応英文国際雑誌で、これを元にしている博士論文だから問題ないなんて笑われる結論を出したのは博士として認めるつもりだったんだろ?一貫として、質も悪い、形式も整っていないでボツにしちゃえばよかったのにね。