科学誌印刷業者さんから、浸透圧実習での平衡状態についてのコメントをいただいた。平衡状態という概念を学生がどこまで理解しているかわからないわけです。
そこで、ちとひらめいたデモ実験は;
用意するもの:2 Lペットボトル2本、網、発泡スチロールボール(網の目を通る大きさ、網の目を通らない大きさの2種類、それぞれ色が付いているといいのだが、白しかなければ色を付ける。水溶性アクリルスプレーがいいのでは?)
ペットボトルの底を切り取り、網をはさむようにしてくっつける。中に入れるボールを取り出したりするので、網はフレームをつけてとりはずせるように工夫する必要があるだろう。
大きさが同じ色の異なる小さいボールを、それぞれうボトルのほうに入れ、激しく振る。色の違うボールが混ざるが、高さはかわらないだろう。出入りがあるが全体としては変わらないという平衡状態が理解できるか?
さらに、片側に網目を通らない大きなボールと一方の色の小さなボール、反対側には異なった色の小さなボールを入れ、高さを等しくしておく。これを激しく振ると大きなボールのある方の高さが増える。色の異なる小さいボールは混在するだろう。浸透圧が理解できるか?
机上だけのアイデアだけど、うまくいくかな?浸透圧のシミレーションとして正しいのかしらん?
[ 追記 ] 2016.5.15
上の浸透圧のシミレーション、高さを揃えて、左側に大きなボールのみ右側に小さいボールのみを入れ振ると、小さいボールが左側に一方的に移動し、高さに違いがでてくるだろう。ボールの大小の比が極端に異なり、小さいボールが小さすぎると、はっきりとした高さの違いがでてこないだろう。
追記はここまで。
大小大きさの異なる発泡スチロールのボールは東急ハンズとかホームセンターで売っているはず。色違いはあるかどうかわからない。水性アクリルスプレーだったら発泡スチロールは溶けないだろう。単なる水性塗料だとうまく色がつかないだろう。発泡スチロールのボールは糸でぶら下げて薄くペイントする。塗料が変な形でくっついて球形が保たれないとだめだろう。
うまくボールを選別してくれるような網目の大きさのネット(網)があるだろうか?網をペットボトルの底に接着剤等で固定するわけに行かない。ボールを出し入れすることになるから、篩のような枠があって、うまくペットボトルがはまり込むようにする必要があるだろう。ペットボトルの口は使えないだろう。
[ 追記2 ]
http://www.geocities.jp/kajitadani/newpage39.htm では大小の発泡スチロールボールではなく、大きいほうは小さいのを幾つか接着しているな。アミを通す・通らないというのは同じ発想だ。
浸透圧説明アイテム♪・・・失敗 2010-04-27 でも同じ発想のようだけど、在米ポスドクさんの指摘のように、静電気で失敗したようだ。 うーん。やってみないとわからないもんだな。
浸透圧が生じる原理って結構難しいですよね。
孔の径より大きい溶質分子が孔に衝突して跳ね返る際に、孔の反対側から溶媒分子を引き込もうとするために、低濃度側から高濃度側への圧力が生じている、という説明だったと思います。
発泡スチロールで再現できるかどうか分かりません。
さすが、在米ポスドクさん。
浸透圧は拡散では説明できないようですね。正直いって、拡散がその原理かと思っていました。知らなかった。拡散だと教わったし、その後勉強していないからですね。改めてネットで検索すると、拡散ではすべてが説明できないとあります。「サイエンスあれこれ 2013年04月16日 16浸透圧の原理(http://blog.livedoor.jp/science_q/archives/1717122.html)」。
多分、浸透圧については、生物のどの分野でも、教科書の最も初めの部分に書かれるし、講義されるわけで、このとき、学生に理解してもらうためには最もわかりやすい説明ー拡散ーで終わっちゃうからですね。
この記事によると「1951年には、Freedmanらによって浸透圧を生み出す分子メカニズムが明らかにされている」とTheoretical Physicsという教科書に記載されているようです。ということは、管理者が生まれたころにはすでに教科書になっていたわけで、管理者を教えた教員も知らなかった、あるいは管理者はサボってばっかだっからですね。後者の可能性が高い。勉強して、来年度の講義は改めることにします。
ありがとうございました。
さすが、在米ポスドクさん。
物理化学など素人ですが、納得しました。
小生が学生さん達(医療職の卵)に勘違いして欲しくないのは、半透膜を通して移動するのは「低濃度側から高濃度側への溶媒分子」だけではなく「高濃度側から低濃度側への溶媒分子」もある、ってことなので、その目的のためだけであれば「拡散モデル」の実験装置でもいいような気が致します。
彼(女)らは、将来「必ずしも安全ではない」溶媒を扱うかもしれないので。
溶質分子に粘性によって引っ張られる溶媒分子を発泡スチロールボールで再現するのは難しいですが、「粘性によって引っ張られる分子」を学生さんたちにイメージしてもらうには、ダイソンの羽根のない扇風機なんかの事例がよいかもしれません。
実は私も数年前まで拡散だと思っておりました。当時行っていた実験で、小さい孔を分子が通過する際に、孔の径によって通過する分子の径がどのように変化するか、という生データを論文で見て、拡散による理論値に合わないことに気付いて、原理を調べてみたのです。
Theoretical Physicsという教科書、見かけたら該当部分を読んでみたいと思います。
学生実習を義務として義理でやっている教官も結構おられる中、器材を手作りしたり、原理を勉強したりして真摯に取り組まれている管理人さんに頭が下がります。
業者さんの仰るように、平衡という概念は必要ですね。発泡スチロールモデルは理想的ですね。乾燥している時期だと、静電気に用心する必要があるかも知れません。
すみません、言葉足らずでしたので補足します。
ダイソンの扇風機の吸気は基部なので、もし「粘性によって引っ張られる分子」がなければ噴出部後方の気流は基部に向かって流れることになります。
しかし噴出部周辺の分子が粘性によって引っ張られるので、噴出部後方の気流まで噴出方向に流れている様子が線香の煙などを使って観察することができると思います。