中部大学の武田邦彦教授というのは、奇をてらって本を書いてもうけている最低の学者だ。
有名なのは、「早死にしたくなければ、タバコはやめないほうがいい (竹書房新書) 」なんていうタイトルの本だ。
最近のブログ記事「2015年08月18日「ヘルシー」と「病院」が病気を作る時代(1) 縦割り医療」でもめちゃくちゃなことを書いている。
血圧は体の血の巡りを保つために、末梢神経や腎臓で適切な血流量を決め、その血流量を維持するために血圧を決める。
たとえば腎臓の血流量が不足すると腎臓から心臓へ「もっと血を送れ」という信号が行き、心臓は筋肉を収縮させて血圧を上げ、血を送る。
だって。ひどいね。腎臓の血流が不足すると血圧を上げるメカニズムがあるのは事実だが、腎臓から心臓に信号が行くわけではない。腎臓(正確には腎臓の細動脈)が血流低下を感知してレニンという酵素を分泌し、これが血中のアンジオテンシンII を増やし、アンジオテンシンII が血管を収縮させるから血圧が上がるのだ。「血圧は…決める」というパラグラフ(センテンス)はなんだかわからない。日本語になっていないのだ。何が血圧を決めるのか主語がない。「血圧が血圧を決める」としか読めない。こういうなんだかわけのわからない日本語を、我が大学の学生さんはしばしばレポートに書くんだよね。学部1年生並みの教授だ。恥ずかしくないのかな。
また
血圧を高くすると、それは「体全体としては望ましい・・・ガン、腎臓病、認知症、熱中症が減る・・・けれど血管が破裂する危険性は増える」
なんて、血圧が癌発生率に関係があるようなデタラメを書く。Google で「血圧と癌の発生率」で検索すると、日本語だけど鳥取大学の先生の研究論文がひっかかってきて、高血圧と癌の罹患には関係がないという報告だ。有意な関係がないとなかなか論文にならない。だから論文がないんだろ。国際誌に報告があればこの論文で引用しているだろ。
WH Chow, G Gridley, J F. Fraumeni, Jr. Bt Järvholm. Obesity, Hypertension, and the Risk of Kidney Cancer in Men N Engl J Med 2000; 343:1305-1311. という論文があって、血圧が高い方が腎細胞癌のリスクが高いらしい。しかし腎う癌には関係がないということだ。
E Grossman, F H Messerli, V Boyko, U Goldbourt. Is there an association between hypertension and cancer mortality? AmJMed 112 479–486 2002 でも同じような結論で腎臓実質の癌による死亡と高血圧に関係があるようだが、他の部位ではないらしい。
というわけで血圧が高いと癌になる確率が減るということはない。