ゴニオメータ

土曜日で、FD(faculty development 研修会ですな)だから大学に出てきなさいというわけで、出校するのだ。勤務日なんだからブログに投稿するのはけしからんなんて言う輩がいるだろうけど、勤務は午後からだ。
リハビリの分野で働く者にとってはゴニオメータ(角度器)というのが、医師が聴診器を常にぶら下げてるように、というかそこまではいかないにしろ必須なのだ。患者さんの関節の回転角度は障害の程度の定量的評価だからな。
検索すればすぐわかるが、2本の物差しを1軸で止めて、回転させ、その角度を分度器が付いているから読み取る器具だ。プラスチック物差しと分度器なので、価格はそんなに高くなるものかと思いきや、医療用となると、東大式とかいって高いのがある。これらは、目視で関節がどのくらい回転できるかを読み取るわけで、誰が考えても、回転角度を電気信号にして、デジタルで読めるようなものがあっても良さそうだが、デジタル角度計となると建築関係になっちゃって、医療用にはないらしい。2000円程度の米国製があるけど国産はなさそうだ。もっとも、デジタルでそれほど精密に測定するものではないから、物差しと分度器で十分なのだ。
角度を電気信号に変換するのは、アナログだったら誰が考えてもボリューム(volume 可変抵抗器、音量を変えることに由来するのだろうか、日本だけで通用する和製英語だ、英語ではpotentiometer)を使えばいいだろということになると思うのだが、そのようなものは市販されていない。
市販されている電気信号が得られるゴニオメータは、関節をまたがって取り付けた弾力のある棒にストレンゲージが仕込んであり、関節が回転すると内部のストレンゲージが変形して抵抗が変わって電圧変化に換算するものらしい。ストレンゲージは温度に弱いし、直線性がないからこれを角度換算する回路を作成するのも大変だ、だから市販のものは高価で、実習に使うからといって15ケも用意できない。
実習では、肘関節が屈曲・伸展した状況が、筋電図とともに記録できればいいので、物差し2本、分度器1枚ボリューム1ケ、あとは前腕と上腕に固定するマジックテープで構成したら、1ケ千円位でできるだろ。そのプロトタイプだ。回転中心にボリュームを取り付けてある。
20160917goniometer
ボリュームは10KBで、PowerLabというAD変換する実習機器が±5V を供給してくれるので、この電圧を10 kΩの抵抗を介してボリュームの1,3番端子にそれぞれ接続し、2番端子から信号電圧をとればいい。ボリュームは340度回転できるから測定範囲は問題ないだろ。マジックテープはまだつけていないが、輪ゴムで前腕と上腕に付けて肘関節を曲げ伸ばししたら、関節もこのゴニオメータの動きにも致命的な問題はない。こんなアイデアは誰だって考えつくわけで、何故ないのかわからない。多分、これでは耐久性がないんだろ。プラスチックの物差しを、ボリュームの軸に固定するわけで、多分この固定したプラスチック部分がすぐに、特に学生実習だと、割れるんだろうな。基本的に3次元の関節に2次元の装置を取り付けることに無理があるが、取り付けるマジックテープに弾力性があればなんとかなると思うわけだ。
少なくとも片方の物差しは透明でないと、分度器も透明でないと角度を測定できないので、一方の物差しをアルミの奴にして、20組作ってみようと思うわけだ。
肘関節の屈曲・伸展は上腕二頭筋が屈筋で、上腕三頭筋が伸筋として収縮して行われる。屈筋・伸筋の拮抗性などが説明してあるインチキページには、しばしば、上腕二頭筋が収縮して肘が屈曲するとき、伸筋である上腕三頭筋が活動すると、屈曲運動を妨げるので、よろしくない。拮抗筋は互いに活動時期の相が逆パターンで活動しないと運動がうまくいかないなんて嘘が平気で記述されているわけだ。学生も、こういう記述がわかりやすいから問題としないのだ。学生に、もしそうなら、運動がマリオネットになっちゃうだろ?といったらマリオネットを知らなくて通じななかった。
実際は、拮抗筋の活動相が逆位相の運動も、同位相の運動もあるわけだ。これを見るために、関節角度と上腕二頭筋、上腕三頭筋の筋電図を同時記録して、考察させるのが、実習なのだ。これまでは、屈曲・伸展の開始時に、筋電図にマークを入れていたのだが、記録したマークがどっちなのか学生はきちんと記録していないので、なんだかわからなくなっちゃうのだ。だからこういうものを作るのだが、成功してからこういう記事は書けばいいのにね。どうなるかは、お楽しみに。頭の中のアイデアだけなんで、なんかうまくいかないことが出て来るだろうな。

「ゴニオメータ」への10件のフィードバック

  1. > 勤務日なんだからブログに投稿するのはけしからんなんて言う輩がいるだろうけど
    そんなことにまでクレームをつける人がいるんですか?勤務時間中ずっとやっているのならまだしも、wage workerでもない人の多少の息抜きにそんなしょうもないケチをつけるなんて、知的労働者としてのエネルギーの使い方や積極的な脳の休め方等には想像も及ばない、頭の固い方なのでしょう。気になさらずに投稿されてください。楽しみにしています。

  2. コメント、励ましのお言葉ありがとうございます。
    法人化したとき裁量時間性とかいうあいまいな労働協約になった国立大学がほとんどだと思います。いつ来てもいつ帰ってもいい、ともかく勤務日は一度大学に来てねという制度ですね。
    私立大学では勤務時間を事務職員同様に決めている所が多いかと思います。命令されて研究するわけじゃないので、月の残業時間が100時間を超える研究者は、文系ならいざしらず、理系では普通にいるでしょう。雇用側が教員にこの勤務時間を杓子定規に当てはめると、雇用時間の管理できないのに残業手当を際限なく支払わなければならず、人件費で潰れちゃうでしょう。ですので教員には残業手当がないけど、事実上勤務時間をあいまいにしているのではないでしょうか。
    研究所ではいざしらず、公立私立を問わず大学教員の勤務時間は現実的には自由度が許されているー悪く言えばルーズーなのが現状ですね。
    だからといって、平日、大学に1時間ほどいて、その後昼間にパチンコなどとは許されないです。でも、誰も管理できていないので、いるかもしれないですね。みたことないけど。個人的な意見をブログで表明するのも差しひかえたほうが無難かもしれません。では、この記事のような、公開して差し支えない実習装置作成メモとか何故このようなものを作るかというような解説というか意見は?実習装置の試作は、いわれてやるものではなく、自らが行う、研究課題にしたければ研究となるような内容かと思います。
    人によって意見が異なり異議がある方もいるから止める、というのは萎縮するだけなので、いやなことと思う次第です。

  3.  正面から写メで撮影して、画像から角度を読み取ってはいけないほどの精度が求められる測定なのでしょうか?

  4. もう総括をしたのであそこのコメント欄はオシマイにしようかな、と思っております。最近は変な人々が湧いてあちらのコメント欄の進みがはや過ぎるのでほとんど読んでいませんが、時々「精神的に向上心のない者はばかだ」という言葉を投げつけているみたいな、モラトリアムを生きているコメントを見ると微笑ましく思います。年齢は結構いっているだろうに、若いな、って。
    >> 業者さん
    可変抵抗と頑丈な棒を用いて実験する、ということですか。
    そのほうがよさそうですね。分度器とか定規がくっ付いている方が、見た目が精密な実験っぽく見えますけどね。
    可変抵抗はリニアな物にした方がよさそうですね。B型というのでしたっけ。

  5. >在米ポスドク様、
     いや、うちの子が看護師で、医師から「バイタルにアラーム鳴ったらこことここをスマホで写真撮ってメールしろ」と指示されたのを思い出しただけですよ。
     漱石ですか。小生はゴニオメータと聞いてなぜかバルザックの「ゴリオ爺さん」を思い出してしまいました。
     また、関西の大学だったら「マリオネットになるじゃないか」「え?あのオーケストラの笛みたいな?」「それはクラリネットじゃ
    !」みたいなボケとツッコミが展開しそうな情景を思い浮かべてしまいましたよ。

  6. お互いに好きくないようだし、この事件はBPOの裁定(?)が出て擁護の方々が騒いで、おしまいでしょうから、コメントするのはもう止め止めという感じです。黒い方のコメントは読むに耐えないし…
    あの筆頭著者のページも、加筆するといっているのにそろそろ半年ですが変化はないし、というか、変化する材料もないし….
    関節角度の測定は、衣服などで覆われてなければ写真でもいいのですが、手慣れた方なら、この記事にあるような角度を電気信号に変換するなんて面倒なことは必要がなく、すぐ計測できますね。精度もプラスマイナス2,3度なんてなもんでしょ。リハビリの結果、数度曲がるようになった・伸展できるようになったと発表しても、差はないじゃんと言われるのではないでしょうか。
    今回の試作品は臨床応用するのは難しいでしょう。物差しの取り付け方が、大きな影響を与えると思われるからです。ボリュームの回転軸と関節回転軸が一致する必要があり、腕にしっかり固定できない(侵襲なしにできればいいけど)ので、運動するとずれちゃうでしょうね。静的な測定は物差し・分度器セットで、訓練された者が実施したほうが正確でしょうね。
    関節角度と筋電図の対応とかを動的に解析するのは、ランドマークを体に取り付け、動画で筋電図ともに記録するのが定番ですね。
    B:よくご存知で。さすが博識ですね。そうです、軸の回転角度と抵抗値が直線関係にある可変抵抗器はBで、横軸に回転角度、縦軸に抵抗値のグラフで、下に凸はA、上に凸の曲線はCですね。Aは縦軸を対数にすると直線になるらしい。つまみの回転角度と音量の知覚量はAカーブのようにすると自然になるので、AuioのAからAカーブという説明ですけど、ホントかな?単にA,B,C の順に付けたのでは?

  7. 角度計測。。。
    私は仕事柄、クリノメーター(clinometer)というものを使っています。地質調査で斜面の角度とか測るわけですが(笑)
    元々、地質調査屋ではないのですが・・・
    当然、アナログのクリノメーターもあれば、デジタルのものもありますが・・・デジタルって、何だか不安になるんですよ。ビタッっと数値が出るのは良いのですが、どのくらい誤差があるんだろうかとかを考えると。中身がわからないと、特に不安になります…

  8. デジタルの欠点は電池ですね。学生実習の場合、年1回しか使わないという実習機器もあるので、毎年、前日の準備で、「あ!電池がねえ」なんて騒いでいます。

  9. カーボン皮膜のボリュウームは誤差がかなりあると思います。20組の互換性を取るのに苦労しそうです。

  10. コメントありがとうございます。そうですね。誤差は結構あるでしょう。毎回、0度のときと90度のときの電圧値を読んで校正・換算させます。そのような機能がADコンバータであるPowerLabという機器の設定ファイルにありますから。角度の絶対値は問題ではなく、屈曲し始めたとき、伸展し始めたとき、屈曲中、伸展中の筋電図との対応が見えればいいので、精度はあまり要求しないです。

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