過去問の勉強

定期試験の時期だ、前期/後期制度を採用している大学が多いと思うが、そういう大学は7月が前半の定期試験だ。学生は担当教員が同じだと、昨年の試験問題を先輩からもらって過去問の勉強をするわけだ。過去問は部活の先輩からというのが一番多いと思うが、ときには新入生歓迎会のゲームの商品が正解付き過去問であったり、成績がよかった実習レポートだったりして、引き継がれていくのだ。3年分持っていればだいたい問題ない。教員の方だって、試験に出す問題はそんなに手持ちがない。重要なところを問題にするわけで、重箱の隅をつつく問題は出したくないからね。
さらに作る方も面倒なんだよ。昔の大学の試験は、2,3問を記述式で答えさせてよかったのだ。学生数が少ないから、記述問題でも採点が難しいわけではない。今はマークシートだ。履修学生数が100名なんかだと、記述問題は現実的ではない。というわけで、試験の前の週は売店のコピー機がおおいそがしなのだ。
マークシートつまり多肢選択問題や空白を語群から選ぶような問題になると、いくらなんでも昨年の問題と同じでは…と思うわけでちょっと違った問題にするために;
「血圧が高くなると(問1)受容器線維の活動が(問2)し、その結果、延髄の循環中枢が迷走神経の活動を(問3)させ、心拍数が(問4)する。」
なんていう問題を逆にして
「血圧が低くなると(問1)受容器線維の活動が(問2)し、その結果、延髄の循環中枢が迷走神経の活動を(問3)させ、心拍数が(問4)する。」
と形を変更するのだ。教員が怠惰だからな。
昨年度の問2は(増加)、問4は(増加)、問5は(減少)が正解なのだが、今年度は(減少)(減少)(増加)が正解になる。
過去問を勉強する学生は、問題を理解しているのではなく、答えを憶えるだけなので、アホなことに今年の問題が昨年とほとんど同じパターンだと知ると、憶えたままの(増加)(増加)(減少)を選択するのだ。
動脈血中の二酸化炭素分圧はどれか?
(1)10mmHg  (2)20mmHg (3)30mmHg
(4)40mmHg (5)50mmHg
という問題の正解は(4)なのだが、この語群の並べ方を逆に
(1)50mmHg  (2)40mmHg (3)30mmHg
(4)20mmHg (5)10mmHg
とすると、学生は(4)を選んでしまうのだ。なんてことだ。正解の番号を憶えるのであって、正しい数値を憶えるのではないのだ。
普通は、意味のある数値を憶えるほうが楽だと思うのだが、苦痛となる意味のない答えの番号を憶えるのだ。自動車運転免許の問題だったら、正解の番号を憶えてもなんとかなるかもしれないけど、大学の試験はそうはいかないでしょ。
国試の過去問の勉強は、同一問題がでることはないのだから、答えを憶えるのではなく、何故この選択肢が誤りで、こっちの選択肢が正しいのかを理解するのだ と口を酸っぱくして言うのだが….
どうやら、高校まで、「勉強とは、ひたすら憶えること」という教育だったのだ。教育方針は違っていたかもしれないが、学生はこの方法で報酬が得られたわけで、これを治すのはかなり困難だ。

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