研究分野の異る研究者の研究計画を読むと、とまどうことがある。例えば、自閉症の子供の何かの能力を調査する場合、対照となるのは発達障害のない正常な子供ということになる。このような対照となる子供を典型発達児というらしい。最初なんだかわからなかった。英語では normal child としているから英語だったらよくわかるのだが。
typically developing children とも言うらしい。どうやらこれを直訳したのが典型発達児のようだ。
高度聴覚障害児(聴障児)に対して聴力正常な典型発達児(聴児)という言葉もあるらしい。「聴児」だぜ。寵児だったらわかるけど。
「赤ちゃんの言語習得から高齢者の認知機能維持まで、典型発達児、健常者、非典型発達児も含め、多くの研究が進行しています。」と表現している文章もある。典型発達児と健常者は違うのかよ?
定型発達児という言葉も使われているようで、「定型発達者(ていけいはったつしゃ)とは、発達が非定型でない者のことである。」なんていう定義がある。これ書いた人真面目なんだろうか。jokeだよな。「馬鹿とは非馬鹿でない者である」と言っているんだぜ。
basal metabolic rate (BMR)という英語がある。これは基礎代謝量と訳すのが正しい。rateなのに量なのだ。これを誤訳して基礎代謝率としたもんだから看護学大辞典には基礎代謝量と基礎代謝率の2つがあり後者をBMRとしている。あきらかに誤りで、看護学大辞典では基礎代謝率という言葉を作っちゃったもんで困っているのだ。「基礎代謝」は概念で数値で示すものではない。これもこの辞典は間違えている。理学療法、作業療法の国家試験問題は毎年のように、基礎代謝量の問題が出るのだが、基礎代謝量は体温が上がったり、精神活動が興奮すると変わるのが正しいことになっている。概念をきちんと理解していない作問者がいるもんで、不適切問題になる(と管理者は思うのだが不適切問題になったことがない。不適切問題だと提案したのだがどっかで握りつぶされた)のだ。
ろう児(難聴児)・ろう者(難聴者)に対して健聴児・健聴者とはいいたくないという主張がある。つまりろう者は不健康なわけではないからだ。で、正常聴力のある人を聴者ということにするらしい。その理由はよくわかるけど聴者が正常聴力者であると、業界外の人がどのくらい理解できるだろうか?
最近の若者の名前はいわゆるキラキラ名だ。そのキラキラ名の学生がキラキラ光っているわけではないぞ。光っている学生と名前には関係がないようだけど。
既存の言葉があるのだから新たな言葉を作らないでほしいね。正常児とか健常児としてくれればすぐわかるのに。差別は言葉からくるわけではないのにね。
ちなみにこの看護学大辞典には面白い定義がある。ベッド・メーキングとは「ベッドを一定の手順に従って作ることをいう。」だって。大工の辞典かよ。