統計を知らないと…

内海聡というこっちの大学の卒業生がいる。淡路島の妄想性障害者が近隣の人を殺傷した事件があった。この精神障害者が内海聡の精神科なんか無意味だ・薬はやめろとかいう意見にしたがって、医者に行くのも薬の服用をやめたのではないかということから内海聡のブログが炎上したらしい。らしいといのは興味がないから調べていないだけだ。内海聡のブログを見にいったのだが、こいつは針小棒大に極端な意見を言うのが趣味なだけだ。なまじっか医師なので人が信用してしまう。ひどいやつだ。で、この内海聡と検索していたら「新谷弘美と内海聡。トンデモ健康本をも少し考える。」というブログにぶちあった。神戸大学の医師のブログらしく、医学関係の記事がほとんどだ。この記事しか読んでいないが、ま、まともな神経の人のようだ。新谷弘美は、なんだか訳のわからんサプリメントを売っている。ま、このブログ主georgebest1969さんが言うような詐欺師に近いのかもしれない。
新谷弘美のブログに行くと内視鏡の医者らしいが、あやしげな酵素やコーヒー浣腸がおすすめのようだ。また牛乳が悪いとか言い出して、牛乳生産者の団体、社団法人日本酪農乳業協会の「乳製品健康科学会議」と喧嘩している。この団体が公開質問を出し、新谷が答えた文書がある。2007年の話だから旧聞だな。しかし問題は統計だからね。
この文書を読むと、新谷弘美の主張のほうが分が悪い。こいつの書いているような健康本によくある例で、根拠がない、根拠を示しているようだが、嘘をついて引用するというパターンだ。ある思い込みを信じさせるため、あたかも権威ある論文とかに書いてあると主張するわけで、本当は、そのような論文は否定されているとか、反対意見が多数だとかいうわけだ。仮説には否定する論文と肯定する論文両方が普通あるからね。
でこの新谷は、ひどい。米国在住の医者なんだから、引用した英語の論文くらい読めよな。新谷はこの公開質問状の答えに「カルシウム・パラドックス」という言葉を持ち出し、牛乳からカルシウムを摂取すると逆にカルシュウムが排出されてしまうことがあるかもという話から;

牛乳論争の際によく引き合いに出されるハーバード大学の研究論文中にも、「牛乳を1日あたりコツプ2杯以上欽む女性の大腿骨頚部骨折の相対危険度は、週あたりコツプ1杯以下しか飲まない女性の1.45倍と書かれていることをご存じのはずなのに、貴団体がなぜ言及しないのか、その理由を教えていただきたいものです。

と主張している。
この根拠となった論文は;Diane Feskanich, ScD, Walter C. Willett, MD, DrPH, Meir J. Stampfer MD, DrPH, and Graham A. Colditz, MD, DrPH, Milk, Dietary Calcium, and Bone Fractures in Women: A 12-Year Prospective Study, Am J Public Health. 1997 Jun;87(6):992-7. の論文らしい。
この論文の結果と結論は;

RESULTS:
We found no evidence that higher intakes of milk or calcium from food sources reduce fracture incidence. Women who drank two or more glasses of milk per day had relative risks of 1.45 for hip fracture (95% confidence interval [CI] = 0.87, 2.43) and 1.05 for forearm fracture (95% CI = 0.88, 1.25) when compared with women consuming one glass or less per week. Likewise, higher intakes of total dietary calcium or calcium from dairy foods were not associated with decreased risk of hip or forearm fracture.
CONCLUSIONS:
These data do not support the hypothesis that higher consumption of milk or other food sources of calcium by adult women protects against hip or forearm fractures.

なのだ。
意訳すると;

一日コップ2杯以上の牛乳を飲む女性はコップ1杯以下しか飲まない人と比べ大腿骨骨折の危険性は、1.45倍、前腕骨折の危険性は1.05倍となった。しかし、この増加には統計的な有意な差はなかった(p>0.05)。結論として、食物から摂取するカルシウムが多くでも成人女性の手足の骨折から保護するという仮説は支持されない。

つまり新谷はこの1.45倍という数値のみ読んで勝手に解釈したのだ。統計学的な意味は確率pが0.05 より大きい、つまり差が認められないということを(95% = 0.87, 2.43、95% CI = 0.88, 1.25)という数値が示しているのだ。この数字の意味の解説はここにある。1.45倍という数字を誤って引用しているわけだ。前腕はたった1.05倍だぜ。新谷がもっともらしい嘘を、知ってか、統計学を理解できないで言っているのだ。ひどいね。
統計の有意差について知っているはずで、にもかかわらず、意図的に誤って引用したとしか思えない。論文の結論では結果に差がないと言っているんだからね。中部大の武田某とよく似ているわけだ。
一方、この新谷の行動を頑張れと応援している奴もいる。その理由は、これまで牛乳が完全食品との誤解を与えてきたから、これを崩して、牛乳の価値の有無を再検討するのにいいからだというわけだ。それはそうかもしれないが、だからといって嘘をついていいというわけではない。

「統計を知らないと…」への2件のフィードバック

  1. 牛乳を摂取すると骨が丈夫になるだとか骨折かのリスクが低くなるというのが一般的な常識である現代において、引用なさっている論文では、大腿骨骨折のリスクが多少なりとも(1.05-1.45)増えることはあっても、減ることがなかったという点が重要な文脈だと思います。
    1.45という高い値だけを引用した事実が恣意的であるのか否かについては第三者としてコメントできる立場にありませんが、少なくとも骨折リスクが1.00を下回ることがなかったという点において、牛乳は骨を弱るさすると断定するには根拠が薄いが、丈夫にはしないということが導き出されていると読めます。

  2. うずら さん
    コメントありがとうございます。おっしゃるようにこの論文は牛乳をコップ2杯以上飲んでも骨折の危険性には関係がない=骨を丈夫にするわけでも、弱くするわけでもないということでしょうね。他にはどのような研究があるかどうか知らないので、これ以上牛乳と骨折の関係は当方には判断できませんね。

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