犯罪捜査にともなう管理者のお仕事

刑法の犯罪が生じ、被疑者に逮捕状や捜査令状が出たとき、警察当局は証拠を集めるため、家宅捜査して、パソコンを含めあらゆる書類を根こそぎ持っていく。それらのうちどれが犯罪に結びつくかどうかを解析するのは、捜査員がやるんだからどうでもいい。家宅捜査のとき大騒ぎになるだけだ。
問題は、現在の日本人でメールを使っていない者は、高齢者と幼児を除いてほとんどいないことにある。メール等のサーバからダウンロードしたファイルは被疑者のパソコンを解析すればいいが、被疑者は、もしやばいことをしているとの認識があれば、さっさとそのようなメールファイルは削除するであろう。しかし、誰もがが知っているように受信メールはサーバに残っているのだ。捜査当局は被疑者が使っているからといって、無関係な多数の人間が利用しているサーバを差し押さえることは、さすがにやらない。ということは、その被疑者のメールを提出せよと警察から照会があるわけだ。拒否したら、強制捜査でサーバを持っていかれちゃう。照会に応ずるのは、今回の場合、組織上最上位の長だ。だからといってその長がサーバにアクセスして該当者のメールを収集するわけではない。最上位の長はサーバの管理者に、組織上の流れに従って、次の長−次の長と経由して命ずるわけだ。
しかたない、平のサーバ運用管理者が該当するメールアカウントに残っているファイルをこつこつ集めるわけだ。なぜこつこつかというと、その被疑者がもっていたと思われるアカウントのパスワードを変更しちゃって、端末のメールソフトに新しいアカウントを作成して受信すれば一発だが、そんなことはできない。あくまでも被疑者のものだからだ。
サーバのadmin としてファイルを覗くしかない。医学のサーバはFTPできるdirectory が限定されている。その場所がわからない。技術管理者のOちゃんしかわからない。Oちゃんに連絡しても返事がない。
しょうがない。コピペを繰り替えすしかない。というわけで延々とメールの本文をコピペした。幸いなことに、比較的新しく作成したアカウントなのでスパムがほとんどない。これが管理者のメールアカウントだったら大変だ。80%がスパム、総メール数100通/日を越える。
でやりましたよ。丸1日かけて。直属の上司に報告するわけだ。分厚い印刷出力を分類して渡しましたよ。これはメーリングリスト、これは不特定多数宛のメール、これはグループの連絡メール、これは個人宛と。そうでもないと上司は判断できないでしょ。
サーバの運用にあたっては、個人情報の開示が本人以外からあったら、該当する組織の長が指示した場合に限り、その長に開示するという規則がある(私が作ったのだ)。そうでもないと、末端のサーバ技術管理者がかわいそうでしょ。万が一、属する親分から、「だれそれのメールをモニタしろ」なんて圧力がかかったとき抵抗できないじゃん。ちゃんとプロテクトしてあげないと。
というわけで、分類までやって、提示したのに、「内容は見ない。そのまま上に持ち上げる」だって。
どて(こけました)。
やっぱし、長なんだから一応は見るべきだよな。これが政治犯だったら大学当局は場合によっては被疑者を保護する立場になるだろうが。大学の教授が逮捕されたんだぜ!!
というわけで、これを読んだmのユーザ諸君! くれぐれも、やばい ことはやらないように。管理者に余計な負担がかかる。また m にあるメールは管理者がその気になったら読めるということも認識してください。これはmに限ったことではないけどね。でも、管理者がこれをやったら犯罪ですからな。やらないよ。